「勇敢に真実を省み、批判することが、新しい時代の建設に役立つ」
前回、前々回のブログで書いたようなことを、つらつらとい考えていた中、今年8月15日に放送されたNHKスペシャル『終戦 なぜ早く決められなかったのか』を録画で観た。「掘り下げて欲しい」と思っていた点を、しっかりと掘り下げてくれた良質なドキュメントだった。
この番組の中では、外務省を含めた日本政府、陸軍、海軍が「なぜ情報を共有できなかったのか」「ちゃんと情報を上部に上げなかったのか」などを検証していた。その当時の状況について外交評論家の岡本行夫さんは、次のように語っていた。
「情報の共有の問題以前に、情報を軽視するというところがある。とにかくタテ割りの組織ですから、軍も日本政府全体も、外から来る話は基本的に雑音なんですよ。自分たちがとったもの以外はね。自分たちがとったものの、自分たちの都合の良いものだけを出している。今から思うと、様々な良い情報が来ていたんですね。そういうものを総合的に情報として、ひとつの戦略として組み替えていく。こういうことは殆どなされない」(25分ごろ)
当時の軍が、自分たちの都合の良い情報だけを、都合の良い状況のためにしか使わなかったということについては、以前、社会学者の宮台真司さんがTBSラジオ『荒川強啓 デイキャッチ』(6/8)でも語っていた。
「丸山昌男はこういうことを言っている。日本の軍隊は陸軍参謀本部であれ、海軍軍令部であれ、ともに現状分析の部署と作戦立案の部署を持っていて、実は作戦立案の部署が権益まみれなんです。どういう作戦をとるかによってお金が動くから。で順序としては、現状分析のあとに立案がなされるんだけど、現状分析を全く無視して権益だけをみた作戦立案がなされる。そうすると、その作戦立案部に合わせて、現状分析がパーフェクトに書き換えられてしまう。簡単に言えば、現状に則した妥当な政治的な決定がなされるというふうには、国策の決定はなされていない」
この時、宮台さんは、軍部が権益のために情報による現状分析を書き換えてしまったのと同じことが、「原子力政策」でも行われているのである、と指摘していた。まさにセクショナリズム。
NHKスペシャル『終戦 なぜ早く決められなかったのか』の最後は、当時、早期の講和を目指して奔走した海軍少将の高木惣吉さんが終戦後に語ったとされるコメントで閉められている。
「反省を回避し過去を忘却するならば、いつまで経っても同じ過誤を繰り返す危険がある。勇敢に真実を省み、批判することが、新しい時代の建設に役立つものと考えられるのであります」(1時間11分ごろ)
「勇敢に真実を省み、批判すること」、それが「新しい時代の建設に役立つ」。
戦争時代、原発問題、スポーツ界などなど。なんだか、ずっと同じ事を繰り返しているような気がする。
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