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2012年12月22日 (土)

「もっと野球ファンが球場に足を運べる料金設定にする必要がある」

ネットでプロ野球、中日ドラゴンズの山井大介投手が今週の水曜日(12/19)に行った契約更改のあとの会見のコメントを読んで、いろいろ思うことがあったので、そのことについて書いてみたい。

まず山井大介投手は、交渉の場で球団と語った内容について次のように語っていた。

「チケット代をもう少し抑えた方がいいんじゃないかと話をしました。家族4人で交通費や食事も入れると4万円ぐらい。ちょっとした旅行ですよ」

ボクも、年に何回か、子供をプロ野球観戦に連れて行くことがあるので、この意見には大きく肯首する。

最近、プロ野球にしろ、Jリーグにしろ、観客数が伸びないという指摘をよく耳にする。そして「もっと魅力的な試合内容の試合を増やさない」と言う声が多い。本当に問題は野球内容だけだろうか。メジャーリーガーが増えたからだろうか。ドラゴンズの前監督の落合博満氏は、十二分の実績を残していたにも関わらず、「ファンサービスが足りない」ということを一因にされ監督をクビになった。後任には、選手たちにファンサービスを全面に押し出すことを求めた高木守道氏が就任した。ファンサービスを充実させ、終盤までジャイアンツと優勝争いを繰り広げたが、結局、ドラゴンズの今シーズンの観客数は減っている。

もちろんスポーツの世界である。シーズンの結果やファンサービスも重要である。が、その一方で、チケットの高額さをもっと指摘してもいいのでは、とずっと思ってきた。

例えば、レギュラーシーズンの東京ドーム。立見席なら大人1000円、小中学生500円。でも子供を連れて行って、立ち見とはいかない。外野席は2000円、3階席だと2300円だが、小さい子供には遠すぎて、よく見えない。なのであまり試合に集中できない。ちゃんと近くで見せようと思うと、少なくともA指定になる。チケット料金は、5200円(S指定5900円)。立見席以外に、子供料金設定はない。

ちなみに今日の新聞に、3月に日本で行われるWBC予選の福岡ドームのチケット代が掲載されていた。一番高い席で、1万4000円。なんと最も安い外野席でも4000円。内野のS指定が1万円、A指定で8000円である。高い。驚くほど高い。実は、先月、福岡ドームで開催された日本対キューバの親善試合でも、ほぼこれに近い値段設定がされていた。その結果、当日の観客席は、1万7468人にとどまり、かなりの空席が目立った。たぶん本番では観客席は埋まるだろう。でも、高すぎないか。山井投手のコメントじゃないが、今や格安チケットを使えば、海外にだって行けそうな値段である。

さらに家族で野球に行った場合は、人数分の入場料だけではすまない。ビールは600~800円するし、カレーも800円、弁当だって1000円くらいする。このデフレ時代に、とびきり美味なわけでもないカレーに800円を払うというのは、野球場か、スキー場くらいではないだろうか。財布の紐が堅くなるのも当然である。コンビニだとビール100円、弁当400円で買えるわけだから、みんな持ち込むことになる。

国際的に見て「高い!」と言われる映画ですら通常料金で、大人1800円、子供1000円。それで2時間楽しめる。ツタヤでも行けば、2時間楽しめる映画が、今や100円で借りられる。そんな中、やはり、子供で5000円オーバーの価格設定はあり得ないと思う。実生活でも、本当なら少年野球の練習終わりに、その子供たちを何人か、東京ドームに野球観戦にでも連れて行ってやりたいと思ったりもするが、この値段だとそうもいかない。入場料、交通費、弁当代、飲み物代、そしてお土産などを買ったら、総額はどのくらいになるのだろう。野球人気がジリヒンなのは、こんな所にも理由があると思う。


実際に野球界の中からも、高すぎる入場料金については疑問の声が出ているようである。楽天イーグルスのオーナー代行、井上智治氏は、WBCの入場料金について、次のように語っている。(11/19)


「もっと野球ファンが球場に足を運べる料金設定にする必要がある。サムライを応援してもらうことが大切だから」

素人考えで思うのは、どうせなら、できるだけ安い料金設定にして、なるべく多くの客を集め、大声援の前で選手をプレーしてもらった方が、選手たちも気持ちいいし、実力も伸びるのではないか。特に、子供の場合は、今、スタジアムに通い、生観戦ならではの野球の魅力を知れば、この先、数十年に渡って野球界を支えてくれるわけだし、その子供の中から新たなヒーローも生まれてくるに違いない。

放映権料や人件費、維持費、警備費など、いろんな事情があっての入場料設定なのだろう。だけど、こうした色んな事情がつもりにつもった結果、ファン層の先細りを招いているのではないか。ただ同じような問題は、球団経営にも起きている。プロ野球の経営評論家という坂井保之さんの、こんなコメントが雑誌『新潮45』(5月号)に載っていたのを思い出した。

「野球界を取り巻く環境の厳しさに、もう一つ昔より、うんと経費がかかり出したこともある。主として管理コストもそうだが、人件費がある」

選手の人件費はもちろん、いろんな事情でコストが上がり、首がまわらなくなる。結局、こちらも膨大な「ランニング・コスト」が球団経営を不自由にして、圧迫しているということになる。ドラゴンズの落合監督も、勝ち続けた結果、監督やコーチの人件費が上がり続けたことが、首脳陣交代の要因の一つとも指摘されている。サッカーでは、イギリスのマンチェスター・ユナイテッドのファーガソン監督は四半世紀も監督を続けているのに。きっと日本における、ランニングコストを生むシステムや認識が特別なのではないかなどと勘繰りたくなる。

こちらは映画の世界の話ではあるが、映画料金について、映画ジャーナリストの斉藤守彦さんが著書『映画館の入場料金は、なぜ1800円なのか?』で次のように指摘している。

「映画産業からも、何かにつけて自分たちの利益を優先するという不動産業的考え方が非常に強く感じられる。いわゆる『企業利益』『業界利益』を何より重視し、時にそれが『消費者利益』を踏みにじってまで優先されるのが、現在の映画産業においても、そのまま見られるのである」 (P201)

スポーツ界も同じような状況にあるのではないか。これまでは右肩上がりの時代、増長するコストをうまく消化して来れたのだろう。そんな時代が終われば、それは身の丈以上のコストとなる。しかし「企業利益」「業界利益」など、色んな「大人の事情」を優先していけば、結局そんなランニングコストが、業界自体の不自由さや硬直化を招き、そしてファンを蚊帳の外に追い出し、その世界そのものをやせ細らせていく。きっとスポーツや映画などのエンターテイメントの世界だけではなく、他の業界や分野にも共通する日本が抱える大きな問題なのではないかと思うのだが。

 

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