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2013年1月18日 (金)

「追い込み型指導でそこそこ戦えるチームに導けるほど、私たちの国のスポーツ水準は低いのだ。この現実から出発しないといけない」

前々回のブログ(1月12日)に、体罰についての桑田真澄さんのコトバを拾ったが、そのあとも新聞やラジオ、ネットで「体罰」を巡る色んな人のコトバを追いかけながら、グルグル考えたりしている。 

個人的なことだけど、先週末のこと。ボクの子供が参加する少年野球でも、OBやコーチたちが「体罰」について話題に。子供たちの前で「我々のころの体罰は、もっとすごかった」という各々の自慢話が展開され、「追い込まなきゃ、伸びないんだよ」「体罰と言うからいけない。気合を入れると言えばいい」などのコトバが出ていた。 

それを聴いていたボクは正直、「なんて前近代的な考え方なんだ」と頭を抱えた。心の底から呆れた。反論はいくらでも浮かんだ。「もう時代が違う」「追い込むことが必要なら、暴力じゃない手法を駆使するべき」「百歩譲って仮に体罰が必要と本当に思うなら、堂々と親や見学の人たちの前で殴ればいい」「そんなことしたら、少子化の時代、チームは成り立たなくなる」などなど。でも、ああいう空気の場所で異を唱えるには、どう切り出せばいいのだろう。どうやったら、こういう指導者たちの考えを変えていくことができるのか。彼らに対抗するコトバの難しさも実感した。

そうした中、TBSラジオ『デイキャッチ』(1月11日放送)の録音を聴いていたら、社会学者の宮台真司さんが次のように語っていた。ちなみに彼は少林寺拳法部出身。 

「年長の世代は、過去の思い出を持っているんですよ。昔は当たり前だったし、文句言わなかったじゃないかと。で自分もむしろそれをアリとして受け止めていたという記憶がある。今は文脈が違っちゃっているんですよ。昔の条件がないので昔の見方で今を見たら大間違い」 

思想家の内田樹さんは、 ツイッター(1月16日)で次のように書いていた。ちなみに彼は合気道の師範。

「体罰によって、あるいは心理的な抑圧によって短期的に心身を追い込んで『ブレークスルー』をもたらすというのは頭の悪いスポーツ指導者の常套手段であり、その有効性を信じている人間が日本には何十万人もおり、私はそういう人間が嫌いである。ほとんど憎んでいる」

そして、野球選手の桑田真澄さんに続いて、ラグビーの平尾剛さんのコトバも非常に説得力を持つ。彼のツイッター(1月16日)から。

「体罰や罵倒によるスポーツ指導には一定の効果がある。短期間のうちに効率よく競技力は向上する。これは間違いない。だが、競技力の向上と引き換えに失うものは限りなく大きい。自制心や胆力を育むもとになる「身体感受性」は、限りなく鈍ることだけは忘れてはならない」

「選手の自主性は、きっかけを与えつつじっと待つことでしか開花しないと僕は思う」
 

「僕たちスポーツ指導者は、選手を兵士に仕立て上げてはならない。追い込み型指導でそこそこ戦えるチームに導けるほど、私たちの国のスポーツ水準は低いのだ。この現実から出発しないといけない。ホンモノの競技力は、然るべき人間的資質を涵養しておかないと決して身につかないものだと思う」 

うんうん。非常に説得力がある。今日、たまたま『ルーパー』という映画を観てきたのだが、体罰を肯定し、実行する彼らこそ、この「ルーパー(繰り返す者たち)」という呼び方がふさわしい。そんな気もする。 

ただ今回は「体罰」がクローズアップしているが、そもそもの問題は、子供たちを委縮させ、追い込むという指導方法が大手を振っているということにあるのではないか。追い込むことで、平尾さんが言う「選手を兵士に仕立てあげ」るというやり方。そうした指導方法については、以前のブログ(2012年8月28日)に書いたことがある。その時の、千葉ジュニアサッカースクール「ソラ」で教える山口武史さんのコトバも、もう一度掲載しておく。 雑誌『サッカー批評』57号より)

「昔からベンチで怒鳴って子供をロボットのように扱う指導者はいましたが、今は専門用語を使っているだけで根本的なことは何も変わっていないんです。『今のタイミングで出さないとダメじゃないか!』なんて強制されても、子供が判断する選択肢はいくらでもあるのに・・・。よく見ていると指示するタイミングもズレているから戦術的にも間違っているんです。子供は何が正しいのかが分からなくて、まったく理解ができずに大人の顔色を気にしてプレーしている。楽しいわけがない。そういう環境の中で、子供はだんだん自信をなくして目が死んでいくんです」 

スポーツ指導者の方々は、平尾さんの指摘する「追い込み型指導でそこそこ戦えるチームに導けるほど、私たちの国のスポーツ水準は低いのだ。この現実から出発しないといけない」というコトバを胸に刻んだ方がいいと思う。「追い込み型指導」ではなく、多様な指導で、スポーツ水準そのものを上げていく必要があるのだろう。まあ、それは政治家や企業のトップ、そして親など、日本の大人全般に言えることなんだろうけど。

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