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2013年4月25日 (木)

「違いばかりを強調せず、共通項をたくさん探しながら『普遍』を探って行きたいと思っています」

前にも少し触れたが、スピルバーグ監督の映画『リンカーン』を観た。崇高な目的を実現するためには、あの手この手を使うという、キレイごとだけでないリンカーンの政治手腕を淡々と描いている。これぞ政治、これぞ議会、これぞ民主主義という感じだった。印象に残ったシーンは多いが、そのひとつが、価値観の違う政治家かたちとの間に小さな「共通点」を見つけ、味方に引き込んでいくというやり方。そのシーンで、うまく「言葉」は拾えなかったけど。

そこで、価値観が違う相手と「共通点」「共通項」を探っていく、ということで、思い出した言葉を並べていってみたい。 

まずは、こちらから。先月末に代官山蔦屋で、映画監督のヤン・ヨンヒさんが、ジャーナリストの木村元彦さんと映画『かぞくのくに』についてのトークショー(3月30日)を行った。そこでヤンさんは、会場の人からの「日本と海外で、映画を観た人の反応に違いはあるか?」という質問に、次の感じで答えていた。 

「海外の人たちの反応で印象的だったのは、映画の中に自分たちのとの共通点を見つけてくれ、そこから話してくれること」 

自らのブログ『ヤンヨンヒの気まぐれ日記』(2011年4月9日)のコメントへのアンサーとして、もう少し詳しく書いていた。 

「ほんと、家族って一つ一つ違いますが、とても共通点があって不思議ですね。海外の映画祭でも肌の色に関係なく『ヤンさんと私の父親はそっくり!』とか言われました。違いばかりを強調せず、共通項をたくさん探しながら『普遍』を探って行きたいと思っています」 

右翼として知られる鈴木邦男さん文化放送『大竹まこと ゴールデンラジオ』(4月8日)に出演したとき、次のように語っていた。

「右と左の対立があるんじゃなくて、話し合える人と話し合えない人の違いがあるんだと思う。同じ右翼だって、かえって距離感がないと危ない。俺とおまえは同じはずだ、100%。なのに、こここが違うのは許せない。逆に労働組合とか左翼の人たちから呼ばれると、全く違うはずだ、でも1%でも合っていると、いいこと言うじゃないかと。最初から距離感があるから。人間関係は家族でもそうだけど、距離感があった方がいいのでは」
 

劇作家の平田オリザさんは、『ていねいなのに伝わらない「話せばわかる」症候群』の中でのように語る。 

「これからの日本社会は、協調性(価値観を一つにまとめる能力)がいらないとは言わないけれど、それよりも社交性(異なる価値観をそのままに、知らない人同士がどうにかうまくやっていく能力)が必要だ」 (P218)

教材作家の北川達夫さんも、著著『フィンランド流 伝える力が身につく本』で、端的に言っている。

「現代に必要とされているコミュニケーションとは、第一に他人との違いを認め、そのうえで『同じもの』を探していく作業だからです」


映画『舟を編む』での、松田龍平さん演じる馬締光也くんと、渡辺美佐子さん演じる大家のタケおばあさんとの会話。 


馬締
 「自分には他人の気持ちがわからない」


タケ 「他人の気持ちがわからないなんて当たり前じゃないか。だからこそ言葉を使って喋らなくちゃ」 

この会話でも、「『他人の気持ちがわからない』といって、コミュニケーションを立つのではなく、だからこそ言葉を使って『共通点』を探し出し、交わっていくしかない」というようにも取れる。 

価値観が違う人たちが、それぞれの違いを認めながらも、「共通項」を見つけ、そこで対話し、なんとかうまく付き合っていく。これこそが、これから求められていくことなのだろう。

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