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2013年7月25日 (木)

「政治システムは『よいこと』をてきぱきと進めるためにではなく、むしろ『悪いこと』が手際よく行われないように設計されるべきだという先人の知恵を私は重んじる」

もう1か月半くらい前になるが、ずっと使っていたPCが壊れた。結局、復旧できず。そこに残していた言葉のメモや原稿も消えてしまった。悲しい。バックアップをしていなかった自分が悪いんだけど。まさに様々な言葉が行方知れずになってしまった。なんとか立ち直って、ボチボチと言葉集めから始めている。

今朝の朝日新聞(7/25)に、月イチに『論壇時評』に作家の高橋源一郎さんが文章を寄せている。その中で、公開されたばかりの映画『風立ちぬ』に触れ、次のように書いている。 

「美と技術の結晶である零戦は、世界とこの国を焼き尽くした。だが、それは戦後復興を支える技術の基礎にもなった。戦争の被害者は、同時に加害者でもあった。善きものと悪(あ)しきものを区別することはできないのである」 

「『原子力発電』は、夢の技術であると同時に、悪夢を呼び覚ます技術でもあった。そのことに気づいたとき、ぼくたちは、『零戦』も、同じ存在であったことを思い出す」
 

零戦、原子力に通じる、科学技術の二面性について書く。 

一方、おとといの朝日新聞(7/23)には、思想家の内田樹さんが、次のように書いている。 

「人々は未来における国益の達成を待つよりも、今ここで可視化された『決断の速さ』の方に高い政治的価値を置くようになったのである。『決められる政治』とか『スピード感』とか『効率化』という、政策の内容と無関係の語が政治過程でのメリットとして語られるようになったのは私の知る限りこの数年のことである」 

「チャーチルの『民主制は最悪の政治形態である。これまでに試みられてきた他のあらゆる政治形態を除けば』という皮肉な言明を私は『民主制は国を滅ぼす場合でも効率が悪い(それゆえ、効率よく国を滅ぼすことができる他の政体より望ましい)』と控えめに解釈する。政治システムは『よいこと』をてきぱきと進めるためにではなく、むしろ『悪いこと』が手際よく行われないように設計されるべきだという先人の知恵を私は重んじる」 

つまり、政策を決定・決断するのに、スピードがあり、効率の良い政治形態というのは、国そのものを滅ぼす局面が来た時にも、スピードがあり、効率が良いということなのである。つまり、滅びるときはあっという間なのである。そうした効率が良い政治形態が過去、どのようなことを導いたか。内田氏は、次のようにも書いている。 

「近代の歴史は『単一政党の政策を100%実現した政権』よりも『さまざまな政党がいずれも不満顔であるような妥協案を採択してきた政権』の方が大きな災厄をもたらさなかったと教えているからである。知られる限りの粛清や強制収容所はすべて『ある政党の綱領が100%実現された』場合に現実化した」 

怖い話だと思う。 

もうひとつ。「二面性」ということで、高橋さんと内田さんは、ともに興味深い指摘をしている。

まず、高橋さんは、次のように書く。

「なぜ、『歴史』を学ばねばならないのか。ぼくたちが不完全な、『善きものと悪しきもの』が混じり合った人間だからだ。そして、そのことを、ぼくたちがしょっちゅう忘れてしまうからだ」 

そして、内田さんは次のように書いている。 

「『経済最優先』と参院選では候補者たちは誰もがそう言い立てたが、それは平たく言えば『未来の豊かさより、今の金』ということである。今ここで干上がったら、未来もくそもないというやぶれかぶれの本音である」

ここで2人がが言っていることをまとめると、僕らは、歴史からも学ぶことをしないし、未来のことについても考えないということになる。これまで、このブログで何回か書いてきたが、とにかく頭の中には「今」のことしかない、そういうことなのだろう。(2012年4月16日2013年1月8日のブログなど) 

 

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