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2013年12月 7日 (土)

「自分たち政治家が国民を幸せにしてあげる、だから黙ってついてこい、というわけです」

特定秘密保護法案が成立した。一応、今回も前回(12月6日のブログ)からの続き。

録音していた文化放送『ゴールデンラジオ』(11月26日)を聴いていたら、元産経新聞記者の山際澄夫さんが、次のようなことを話していた。 

「僕らにも秘密がある。まして国家をや、ということ。われわれ個人にも企業にも秘密がある。国家にも秘密がたくさんある」 

「知る権利も大事だけど、国家あっての知る権利なんですよ。国家の安心とか安全とかが守られて初めて…。情報がどんどんもれるような国では安全も安心もないんですよ」
 

でも、である。
やはり国家の秘密と、個人の秘密は違うと思う。個人の秘密は当然、個人のもの。かたや国家の秘密も、本来は市民のもの。それを一時的に国家に預けているにすぎない。いつかは持ち主である市民にオープンにすることが大事なのだし、国家や官僚の恣意的な運用は避ける仕組みをつくらなければならない。
 

それに「国家の安全」が、個人の「人権」の上にあるというのも変な話だと思う。極端なはなし、「人権」が自然と守られているなら、「国家」なんていらない。手段として「国家」があった方が、「人権」が守りやすいので、「国家」が存在するに過ぎないんだと思う。 

以前のブログ(3月28日)で紹介した高市早苗氏の「国家と国民は一体でしょ」というセリフにもかなりの違和感を持ったり、気持ち悪さを感じりしたが、今回の発言は“一体”どころか、「国民」より「国家」の方が上に存在しているのである。本来の位置関係と逆転している。 

最近、読んだ石原慎太郎氏著書『新・堕落論』には、そんな言葉があふれていた。 

「国が衰え傾くということは、私の、私たちの人生が衰え傾くということです。それを願わぬなら、国と表裏一体の己のためにこそ、国について想い、考えなくてはならないのです」 

「国家が荒廃して沈むということは、自分の人生が荒廃して沈むということに他ならない。一蓮托生というのはまさにその事です。国家が在って私が在り、私が在ってこそ国家が在る」 (P216) 

あくまでも「国家と国民は一体」。行間には「国家の方が大事」というニオイがぷんぷんする。個人的には「ほんとかよ」っていうのが正直な感想。 

この「国民」「市民」は「国家」に従属すると考え方については、弁護士の伊藤真さん新著『憲法問題』でも触れられている。自民党が提案している憲法改憲草案が、「天賦人権説を否定している」としたうえで、次のように述べている。

「天賦人権説の否定から見えてくるのは、国の主人公は為政者であり、国民はその庇護のもとに暮らせばいいという発想です。自分たち政治家が国民を幸せにしてあげる、だから黙ってついてこい、というわけです」

「改憲案をつくった自民党は、市民一人ひとりが自立した個人を考えて行動することを望んでいません。むしろ為政者に従属して生きることが国民の幸せだと考えているのです」 (P83)

これは、前々回のブログ(12月2日)に紹介した政治学者の岡田憲治さんの指摘とまったくもって重なる。

国家や政治家に「黙ってついて」いっても、たぶん「国民」「市民」を守ってくれる保証はないと思う。

ジャーナリストの吉田敏浩さん毎日新聞夕刊(11月7日)で述べていた次の言葉。この中の「軍隊」「軍」という文字を、そのまま「国家」という文字に入れ替えることができると思う。

「軍隊は住民を守らない。軍は軍そのものを最優先させる。そして、国民の目と耳と口をふさいで戦争や軍隊への批判を抑える。これは戦争への道なのです」

もうひとつ。東海村の前村長、村上達也さん『東海村・村長の「脱原発」論』で語っていた次のセリフ。

「本当に、日本は恐ろしい国だと思っています。国民の生命財産より原発が大事で、しかも随所で隠蔽体質と無謬性への恐怖がある」 (P54)

この中の「原発」という言葉を「国家」に入れ替えて読んでみても成り立つのでは。そんな気がする。

戦争が終わって、68年も経つのに、「なによりもまずは國體護持」という考え方やシステムのようなものは全く変わっていないのだろう。だから、どれだけ国民からの反対があっても、自分たちに都合のよい特定秘密保護法案を成立させてしまうのである。


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