「ポエムの言葉は、ものごとを曖昧にする時、あるいは単純化するときにとても力のある言葉」
先日のブログ(12月27日)で、コラムニストの小田嶋隆さんの『ポエムに万歳!』を取り上げた。おとといのNHK『クローズアップ現代』(1月14日)の放送で、「あふれる“ポエム”?! ~不透明な社会を覆うやさしいコトバ~」と題して、「ポエムの言葉」についての特集を放送していた。
その放送の中で、語られていた言葉を載せておきたい。
この番組にも出演していた小田嶋隆さんは、「ポエムの言葉」について次のように定義する.
「ポエムの言葉は一般の言葉と違ってあまり説明しない言葉。結論や内容は相手の読解力に委ねているところがある。命令はしていないけど、読み手の側が同調していくという求心力を持っている言葉だと思う」
「ポエムの言葉は、ものごとを曖昧にする時、あるいは単純化するときにとても力のある言葉。対照的な言葉は、ジャーナリズムの言葉で、5W1Hで必ず根拠を説明しなさい、意味を説明しなさいというもの。ちゃんと人間が情報をやりとりするときは、5W1Hをチェックしましょうねということだった。ポエムというのは、それを全部とっぱらって、曖昧なフワっとした中で説明を放棄してしまう。あるいは何かを隠蔽してしまう」
司会の国谷裕子さんも、次のように指摘していた。
「若者たちの働いている本当の現場の問題を分かりにくくしているという面もあると思う」
曖昧だけど、一見前向きで優しい「ポエムの言葉」を口にすることによって、現場の様々な問題と向き合うことを避け、厳しい現実を忘れようとしているのではないか。という問題提起を番組ではしていた。
しかし、「ポエムの言葉」が社会にあふれ、ありがたがられている状況に、われわれはどう対処していけばいいのか。小田嶋さんは、次のように話す。
「行政とか権力のようなところが、ポエムの言葉を使うことについて、我々は面倒くさい人間だと思われることを恐れずに、いちいち5W1Hを問いかけて、『美しい日本』だと言われたら『どんな国が美しんですか?』『何を取り戻すんですか?』を問いかけていくべきだと思う」
また同じく番組に出演していた甲南大学准教授の阿部真大さんは、最後に次のように語っていた。
「大人が文字通り取らないことが大事だと思う。その裏にある醜い現実をきちんと見ていく、これが今の日本に求められていることだと思う」
当然ながら、この指摘は政治の世界でも当てはまる。「美しい国」「強い日本」「積極的平和主義」「国土強靭計画」「平成維新」「結いの党」など漢字の並んだ「ポエム言葉」があふれる。これらの言葉が隠す「醜い現実」にきちんと目を向け、その「カサブタ」の下にある具体的な言葉を引き出していくしかないのだろう。
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