「言葉チューものは人間が一生使い続けにゃならん大事な道具でノンタ、そや少しは面倒でも、時には手間暇かけてピーカピーカに磨き上げるチューのも大切ジャノー」
今回も「言葉」について。最近、読んだものの中で「言葉」についての印象的なフレーズを載せておきたい。
文芸評論家の加藤典洋さんの著書『僕が批評家になったわけ』を読む。その中で「批評とは何か?」を説明する文章を見つけた。
「では、筆者にとって批評とは何か。とりあえず、『ことばでできた思考の身体』といっておく。だから、大事なのは、まず、『自分で考えること』である」 (P3)
「批評とは、ものを考えることがことばになったものだ」 (P43)
なんだか染み入る文章である。
すなわち、「批評」とは「言葉」なのである。これは切っても切れない。
これまでこのブログでも「批評・批判」について いろいろ考えてみた。それらの言葉を改めて読み直してみると、今の社会で、「批評・批判」(山本七平さん言うとことの「水を差す」という行為も)が居場所をなくしていることと、「曖昧な言葉」(すなわちポエムの言葉)が幅を利かしていることは、同じ現象だということが分かる。
こうしたことを考えている中、朝日新聞夕刊(1月10日)を読んでいたら、芥川賞・直木賞についての特集記事が載っていた。その中でひとつのフレーズが気になった。
「批評より感想が共感を集めるソーシャルメディア時代」
今の時代は、社会を批評する作品より、みんなの共感を集める作品の方が売れたり評判になったりするということ。批評というものの価値より、
共感の価値が優先されるということでもある。
すなわち、「言葉」より「共感」。そんな時代なのである。
そのほか、印象に残った言葉を。作家・井上ひさしさんの戯曲のセリフを、こまつ座が編集した『井上ひさし「せりふ」集』から。
「言葉こそ、人間を他の動物と区別するただひとつのよりどころなんです」『日本人のへそ』より (P23)
「言葉チューものは人間が一生使い続けにゃならん大事な道具でノンタ、そや少しは面倒でも、時には手間暇かけてピーカピーカに磨き上げるチューのも大切ジャノー」 『國語元年』 (P26)
人間が人間であるために、言葉を手間暇かけて磨き上げていかないといけない。改めて。
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