「なんか、どんどん価値観がせばまってくる感じがするじゃん?そこを心配するべきなんじゃないかな」
きのうのブログ(2月25日)では、「違い」というもの大切さや、それを面白がる必要についての言葉を並べてみた。
要は、弁護士の伊藤真さんが「一人ひとりが多様に生きていることこそがすばらしい」と語っているように、「同調圧力」に押し流される均一的な社会を作るのではなく、個人の生き方や価値観の多様性が担保された社会こそ、僕らが目指すべきものなんだと思う。
今回は、その「多様性」について考えさせてくれる言葉を並べてみたい。
まずは、みうらじゅんさん。宮藤官九郎さんとの対談本『どうして人はキスをしたくなるんだろう?』から。
「何に一番価値を見いだすかって、人それぞれっていう考え方があったほうがいいよね。俺はたくさん選択肢がある時代のほうが楽しいと思うんだけどなぁ。だって、なんだか乱交みたいでイヤらしいでしょ、全員がひとつになるって(笑)」 (P218)
「俺はなんか、今の日本って、精神的に不景気な感じがするんだよね。心が貧乏くさいっていうかさ。なんか、どんどん価値観がせばまってくる感じがするじゃん?そこを心配するべきなんじゃないかな。本来は自分に理解できないからこそ掘る面白さもあるんだけおねぇ。お金に換算できるものって大概、貧乏臭いとおもうけどね」 (P223)
あの、みうらじゅんさんも心配しているのである。
作家の平川克美さん。『脱グローバリズム』から。
「『もっと誇りを持て』といいたいよね。貧乏であることとか、自分の生き方にさ。自分の価値観が世間と異質なものであってもいいという矜持といえばいいのかな。それがあることで、価値観がバラけていくと思うんですよ」
「どうも、お金の多寡で階位が決まるような一つの価値観が、この何年間にものすごい勢いで進行したしたなと僕は思っていて。そこをバラけさせないと、今の問題というのはなかなか難しい。また結局、金詰まれたらだめか、みたいな話になっちゃうんじゃないかと思います」 (P54)
2人とも、「お金」というものへ価値観が収斂してしまっていることに疑問を投げかけているのが興味深い。
予備校教師の里中哲彦さん。著書『黙って働き
笑って納税』から。
「全員が似たような考えになっているときは、ほとんどの人はものごとの本質を考えていない」 (P23)
結局、思考停止ということ。そんな世界は、やがて自分たちの首をしめてしまう。
映画監督の山田洋次さんは、TBSラジオ『久米宏ラジオなんですけど』(2013年12月14日放送)に出演して、今の日本人の持つ価値観について、次のように語っていた。
「今は、その価値観までも金縛りでしょ。寅はかなりでたらめなんだけど、自分の価値観を信じてますから。平気でそれで行く。それが今の人間にはできない」
最後に、思想家の内田樹さん。著書『内田樹による内田樹』から。
「全員が同一の『正しさ』で統制された個体識別できない集団は、そうでない集団よりも生き延びるチャンスが少ないからです。集団生き延びるチャンスを減殺するようなものは、その定義自身によって『倫理的でない』ということになります。それが僕の考え方です」 (P31)
上記の言葉から見えてくるのは、今の日本は、「お金」や、都合のよい「正しさ」という価値観で社会や集団を均一化、画一化しようとしているのではないか。(2013年5月15日のブログなど )。
意識的か、無意識なのかはわからないが、その単一的が「同調圧力」となって、社会の幅を狭めている。いわゆる閉塞感というやつではないだろうか。そんな社会は長続きしないというのが内田さんの言葉の趣旨だと思う。
前回のブログで書いたように、「多様性」と、「均一化」「効率化」はトレードオフの関係である。まさに文字通り。
これまでのブログ(2013年5月22日など)でも何回も書いてきたが、なんだかんだ言っても、今の社会は「多様性」をとにかく排除したい、という風潮があるのだろう。困ったもんだ。
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