「考えることで人間は強くなる」
先週放送されたピーターバラカンさんのTFMの番組『ザ・ライフスタイル・ミュージアム』(2月21日放送)を聞いていたら、ゲストとして出演していたドラマ『あまちゃん』の主題歌で知られるミュージシャンの大友良英さんが、自分の故郷の福島について、次のように語っていた。
「僕は科学者じゃないので、放射能のことをどうにかすることはできないんですけど。こういう状況の中で人はどう生きていくかという考え方を出していくのが音楽家とか文化に携われる人の役目だと思っている。それは多分意見の違う人たちが、違うままでどううまくやっていくかという枠組みかなと思う。お祭りをやるのも、その中の大切な一つだと思っている。じゃないと本当に状況は厳しいので。ただその状況に向かっているだけだと生きていけない」
これは被災地だけではなく、今の社会前提にも当てはまることだと思う。
「同調圧力」によって社会をひとつにまとめるのではなく、多様な価値観をそれぞれ大切にしながら、お祭りや音楽などの文化、エンターテイメントを介在させることによって、その様々な人たち同士がうまくやっていくということ。きっとそれが社会なのだと思う。
それから。「同調圧力」絡みの言葉も追加しておきたい。
読売新聞(2月22日)で、編集委員の芥川喜好さんのコラム『時の余白に』を読んでいたら、次の一文で締めくくられていた。
「人がどう騒ごうが、自分で受け止め、自分で考えて、つまらなければそこから立ち去ればいい。自分は加わらない、自分はそうしない、という身の処し方もあるのです」
この言葉は、「同調圧力」に対する処し方となっていて興味深い。では、芥川さんは、上の言葉を映画『ハンナ・アーレント』から導いている。
ナチス政権のもとで、ユダヤ人虐殺の中心的人物であるアインヒマンについて、映画『ハンナ・アーレント』の中で、ハンナ・アーレントは次のように語る。
「人間であることを拒否したアイヒマンは、人間の大切な質を放棄しました。それは思考する能力です。その結果、モラルまで判断不能となりました。思考ができなくなると、平凡な人間が残虐行為に走るのです」
そして、映画のクライマックスで、アーレントは学生への講義を次の言葉で締めくくる。
「考えることで人間は強くなる」
芥川喜好さんは、この映画について次のように書いている。
「世評は知らず、この映画の主題が『言葉』であることが面白かったのです」
「言葉、すなわち思考、すなわち思考する人間」
つまり、「同調圧力」に加わらないためには、やはり「考えること」と「言葉」が重要ということなのだろう。
このブログではいろんなことがつながって、結局、同じことを繰り返し書いている。そんな気になってきた。「考える」(2012年5月8日のブログなど)、「言葉」(2013年11月21日のブログ など)
« 「日本社会が自信を取り戻し、再び前進するためには、世界の多様な文化や価値観、政治や社会に目を開き、そこから多くを学びとるとともに、国内でも多様性を涵養してくことが必要です」 | トップページ | 「敢えて“見たくないことも見る、考えたくないことも考える”ようにしなければ同じ愚を繰り返すことになる、ということではないだろうか」 »
「★サッカーと多様性」カテゴリの記事
- 「政治においては『言葉がすべて』なのです」(2014.07.23)
- 「多様な『正しいこと』をすり合わせ、みんなで『正しいこと』を模索し続けなければ、破滅の道を歩んでしまうのではないか」 (2014.07.19)
- 「ドイツにとって移民国家への転換は、外国人を『リスクとコストと考える文化』から『ドイツに貢献する歓迎すべき人々と考える文化』への転換でした」(2014.07.17)
- 「多元的な環境がいい男を作るんです」(2014.07.16)
- 「どうも日本人は、そういうミスやリスクのある要素を排除したいと考える傾向があるようだ。サッカーに限らず、人生においても、そういう傾向があるように思える」 (2014.07.14)
「言葉・言語力」カテゴリの記事
- 「ネタ的な感動消費ではない言葉を、自ら引き受けて生きる覚悟のある人間が作品をつくり、その姿勢が読んだ人にも文字を通して伝わっていく」(2014.04.21)
- 「エモーショナルな物語でなければ対抗できないからって、こっちもエモーショナルな言葉を謳っていいんだろうか」(2014.04.18)
- 「周りと同じ考えで無事でいられるというのではなく、もっと自分自身で言葉を選び考え、決して他人の言葉が自分の言葉と同じと思ってはいけない」(2014.03.06)
- 「考えることで人間は強くなる」(2014.02.27)
- 「ツイッターでは、ここ数年、やさしいより厳しい言葉の方が受ける傾向が強まっている」(2014.02.21)
「★考えることの大切さ」カテゴリの記事
- 「夢中になるのは、自分がしていることがどういう結果をもたらすことになるのか、あらかじめわかっているからではなく、何が起きるか予測がつかないからなんです」(2014.11.07)
- 「私たちは、生きるテーマを見つけるために生き、そして書くのだ」 (2014.03.27)
- 「ならば、どんなにか辛くても目を背けず真正面から向き合い、自分で考え、自分で動くしかないじゃないか。弁解したところで、愚痴ったところで詮方ない」(2014.03.05)
- 「考えたくないことは考えない、考えなくてもなんとかなるだろう。これが空気の国の習い性だ」(2014.03.04)
- 「敢えて“見たくないことも見る、考えたくないことも考える”ようにしなければ同じ愚を繰り返すことになる、ということではないだろうか」(2014.03.03)
「同調圧力」カテゴリの記事
- 「自由を担いきれないので、自分から手放してしまう人たちがいると。手放した人たちにとっては、自由を求めて抵抗している人がうっとうしい。なので、その人たちを攻撃してしまう」(2014.09.01)
- 「わたしたちはこの種の熱狂が、必ずしもわたしたちに幸福な未来を約束してこなかった歴史に学びたいと思う。そして、圧倒的な祝祭気分に、あえて水を差しておきたいと思う」(2014.03.13)
- 「周りと同じ考えで無事でいられるというのではなく、もっと自分自身で言葉を選び考え、決して他人の言葉が自分の言葉と同じと思ってはいけない」(2014.03.06)
- 「考えたくないことは考えない、考えなくてもなんとかなるだろう。これが空気の国の習い性だ」(2014.03.04)
- 「敢えて“見たくないことも見る、考えたくないことも考える”ようにしなければ同じ愚を繰り返すことになる、ということではないだろうか」(2014.03.03)
この記事へのコメントは終了しました。
« 「日本社会が自信を取り戻し、再び前進するためには、世界の多様な文化や価値観、政治や社会に目を開き、そこから多くを学びとるとともに、国内でも多様性を涵養してくことが必要です」 | トップページ | 「敢えて“見たくないことも見る、考えたくないことも考える”ようにしなければ同じ愚を繰り返すことになる、ということではないだろうか」 »
コメント