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2014年2月21日 (金)

「ツイッターでは、ここ数年、やさしいより厳しい言葉の方が受ける傾向が強まっている」

きのうの朝日新聞(2月20日)に、作家の百田尚樹さんのインタビューが載っていた。

都知事選挙で田母神候補の応援演説に立ち、他の候補について「人間のクズみたいなもの」と言ったことに対して、次のように語っている。

「言葉の表現としての反省はある。言いすぎだったなと」

一応、「言いすぎ」という認識はあるらしい。

この「クズ」発言もそうだが、最近、ネットなどで「言いすぎ」な強い言葉が氾濫しているのが気になっていた。例えば、気に入らないものがあるとする。そこで「あまり好きでない」と言えば済むのに、わざわざ「クズ」とか「クソ」とか「許せない」というような汚い言葉を投げるのである。

攻撃的な言葉、汚い言葉、尖がった言葉、相手を傷つける言葉を使うことへのハードルが低くなりすぎているのではないか。

コラムニストの小田嶋隆さんは、TBSラジオ『たまむすび』(1月7日放送)で次のように言っている。

「ツイッターでは、ここ数年、やさしいより厳しい言葉の方が受ける傾向が強まっている」

結局、「厳しい、強い言葉」を使わないと届かない、受け取ってくれないという意識でもあるのだろうか。

思想家の内田樹さん著書『街場の憂国論』で、「ネットにあふれる言説」と「攻撃的な言葉」の関係について次のように書いている。

「『誰でも言いそうなこと』を言う人の言葉づかいはしだいにぞんざいになり、感情的になり、断片的になり、攻撃的になり、支離滅裂になっていき、やがて意味不明のものになります」 (P8)

「『誰でも言いそうなこと』を語る人は、『いなくなっても替えが効く人』だということです。その人自身は『多くの人が自分と同じことを言っている』という事実を根拠にして『だから私の言うことは正しいだ』と思っています。ネットに匿名で攻撃的なことを書く人のほとんどはそういう前提に立っています」 (P10)

ネットだけの世界でない。ヘイトスピーチしかり、政治家しかりである。

敢えて具体的なフレーズはここで取り上げないが、大阪の橋本市長による「クズ」のような言葉はきりがない。

ドキュメンタリー映画監督の想田和弘さんは、雑誌『世界』(2012年7月号)で、橋下氏の言葉について次のように語っている。

「橋下氏お得意のフレーズを並べてみると、人々が社会に対して抱いている不満や懸念を掬い上げるようなものであることに気づかされます。しかもそこに、人々の(理性ではなく)感情を煽り立てる何かを感じます」

一水会の鈴木邦男さん著書『愛国者の憂鬱』から。

ヘイトスピーチのデモを受けて政治家が『日本人の中にこんなに激しい声があるのか』と思って、政治家も差別的な発言をついつい言っちゃったりする。『俺たちも過激なことを言わないと選挙に通らない』みないな感じで。日本は外国にする配慮って全然ないです」 (P192)

「僕はずっともう何十年も右翼活動をしているからわかるけども、同じ考えの人たちだけが集まっていると、どうしても言葉がより“強い”方が勝つんですよ」 (P208)

結局は、新しい「価値観」みつけ、それを共有することができないため、不安や不満の共有でしか繋がれないということなのではないか。

エコノミストの藻谷浩介さん著書『里山資本主義』から。

「はじき出されないためには、不安・不満・不信を強調しあうことで自分も仲間だとアピールするしかない。つまり擬似共同体が、不安・不満・不信を癒す場ではなく、煽りあって高めあう場として機能してしまう」

 

「安倍首相も、不安・不満・不信を解消する力量のある人物というよりは、自分と同じ目線で不安・不満・不信を共有し、自分の側に立って行動してくれる人物として人気になる」 (P253)

きのう読んでいた角田光代さん小説『私のなかの彼女』にも、こんな一文があった。悪口でしか居酒屋で盛り上がれない同僚に対しての主人公の言葉。

「今は、こんなネガティブなことでしか共有し合えないのだ」 (P39)

このブログでは、年末から何回か「言葉」について書いてきた。(2013年11月21日のブログなど

曖昧な輪郭な言葉に、汚い攻撃的な言葉…。とにかく言葉が荒れている。

最近知った『苦海浄土』で知られる石牟礼道子さんの言葉を紹介したい。(森達也『クラウド 増殖する悪意』から)

「昔の言葉は織物のように生地目があって、触れば指先で感じることができたのに、今の言葉は包装紙のようにガサガサとうるさくて生地目がないの」 P24)

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