「統御可能性からスモールさが大切だ」
前回のブログ(3月20日)は、社会学者の山下佑介さんの「システムが大きすぎるのだ」という言葉を紹介した。
個々の暮らし、個々が持つ多様性を大切にしていくためには、今のシステムは大きくなりすぎているということ。
社会学者の宮台真司さんは、『週刊読書人』(2013年12月20日)のインタビューで次の言葉を述べている。
「統御可能性からスモールさが大切だ」
今回は、「小さいサイズ」を見直していく必要があるのではないか。そんな言葉を並べてみたい。
政治学者の姜尚中さん。著書『日本人の度量』から。
「小さいことは素晴らしい、小さいものが美しい、ということ。私たちはやっぱり自分たちの生活を、もうちょっとダサくていいから、違う幸せのあり方を見出せるようなサイズに見直すべきではないかと」 (P22)
文化人類学者の辻真一さん。著書『弱さの思想』から。
「近代的な社会の中で、『弱さ』として見なされてきたもの――巨大化、集中化、大量化、加速化、複雑化などに対する『スモール』、『スロー』、『シンプル』、
『ローカル』といった負の価値を荷ってきたもの――が元来持っているはずの『強さ』が浮かび上がってきたのではないか。この逆説的な事態――『強さの弱さ』と『弱さの強さ』――こそが、ポスト三・一一の月日のひとつの重要な特徴でなかったろうか……」 (P13)
えにし屋代表の清水義晴さんは、「大きなもの」「強いもの」が有難がられていったのは、競争原理、効率化が進んだバブル期以降のことだと書いている。著書『変革は、弱いところ、小さいところ、遠いところから』から。
「日本中が拝金主義に覆われていたバブル期と、その後の不況による倒産・リストラの嵐が荒れ狂った『失われた十年』のあいだに、弱いものは負け、強いものだけが生き残ることは当然だ、という空気が私たちの社会のすみずみまで覆ってしまいました」 (P119)
そして、『変革は、弱いところ、小さいところ、遠いところから』という書名にも表れているように、次のように述べている。
「より人間らしい絆によってつながりはじめ、ほんとうに些細なこと、見落としがちなこと、しかし、じつはだれもが感じていることへの働きかけ、高くて大きなところからではなく、低くて身近なところから私たちの社会を変え始めている。そんなふうに私は思いはじめています」 (P120)
イギリスの経済学者、シューマッハに『スモール・イズ・ビューティフル』という著書があるが、「スモール」「スロー」「シンプル」という概念は、我々の生活を守っていくうえで、「必需」の考え方になっているのではないか。もう小さなシステムでしか、個々の暮らしは守っていけないのではないか。そんな気がする。
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