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2014年3月 3日 (月)

「敢えて“見たくないことも見る、考えたくないことも考える”ようにしなければ同じ愚を繰り返すことになる、ということではないだろうか」

前回のブログ(2月27日)でも取り上げたが、映画『ハンナ・アーレント』の中で、アーレントは「考えることを拒否した人間は、残虐行為に走る」と語っていた。

この映画については、作家の高橋源一郎氏も、朝日新聞(2013年11月29日)の『論壇時評』で書いている。

「アーレントは、アイヒマン裁判を傍聴し、彼の罪は『考えない』ことにあると結論づけた。彼は虐殺を知りながら、それが自分の仕事であるからと、それ以上のことを考えようとはしなかった。そこでは、『考えない』ことこそが罪なのである」

そして、この「考えない」ということを日本人にも突きつける。

わたしたちは、原子力発電の意味について、あるいは、高齢化や人口減少について考えていただろうか。そこになにか問題があることに薄々気づきながら、日々の暮らしに目を奪われ、それがどんな未来に繋(つな)がるのかを『考えない』でいたのではないだろうか。だとするなら、わたしたちもまた『凡庸な悪』の担い手のひとりなのかもしれないのだ」

我々も気づきながら「考えない」。すなわち「思考停止」に陥っているのである。

 

作家の村上龍氏は、著書『賢者は幸福でなく信頼を選ぶ。』で次のように書いている。

「多くの人が『思考停止』に陥っている。シリアスな現実から目をそらし、希望的観測をまじえて将来を予測し、考えることから逃げる。その方法、生き方は、とても楽だ」

「わたしたちは、それについて考えることが面倒で苦痛なとき、とりあえず精神が楽になる道を選ぶ傾向がある。表面的なことだけが語られ、都合の悪い事実は覆い隠され、そこから学ばなければいけない過去の出来事については、できるだけ早く忘れようとする」 P201)

考えることを拒否する。思考停止に陥る。村上氏は、そういう生き方は「楽だ」とする。だから、「同調圧力」にただただ、流されていってしまうのであろう。

われわれは、アインヒマンの「凡庸な悪」を笑ってはいられない。

韓国人監ポン・ジュノが撮った公開中の映画『スノー・ピアサー』。この中で、主人公の男、カーティスはクライマックスで、次のように語る。

「俺たちがずっと壁だと思っていたのは実は扉だ」

そこに外に通じる「扉」があるのに、それを見ないふりして、ただの「壁」だと勝手に思い込む。扉がないことを理由に、期限切れのシステムから飛び出さずに、いつまでも、目の前のシステムに居続ける。

この映画は、「國體護持」から抜け出せない人々を描いた力強い「寓話」でもある。

 

見たくないものを、なかったことにする。この傾向は、日本人には特に強いようだ。

社会学者の宮台真司さんビデオニュース・ドットコム『Nコメ』(2013年11月2日放送)では、まさにそのままの言葉を口にしている。

「日本国民によく目立つ傾向。見たいところしか見ない。見たくないところは見ないというより無かったことにする」 (1時間46分50秒ごろ)

その次の回の放送でも、こう述べている。ビデオニュース・ドットコム『ニュース・コメンタリー』(2013年11月9日放送)より。

「小室直樹先生は、日本人の悪い癖は『神頼み』だといっていました。要するに見たくないものは見ないというのと同じ。神に頼むだけ、つまり何もしない。見たくないものは見ないのと同じ機能。つまり実際に起こりうる事態について、事前に分析をしてそれだけの備えを整えておくということをしないで進むことを正当化する」 (58分30秒ごろ)

こうした日本人の体質が、もっとも顕著に表れてしまったのが、原発問題でもある。

「失敗学」を研究し、東日本大震災の原発事故を受け、政府の事故調査・検証委員会委員長を務めた畑村洋太郎さんは、岩波書店編集『これからどうする』で、次のように書いている。

「東日本大震災の津波と原発事故で私たちが学んだ最大のことがらは、“人は見たくないものは見ない、考えたくないことは考えない”という特性を持っているため、敢えて“見たくないことも見る、考えたくないことも考える”ようにしなければ同じ愚を繰り返すことになる、ということではないだろうか」 (P349)

 

見たくないものは見ない。すなわち思考停止。そして同調圧力に巻かれていく。

この連鎖から抜けるためには、畑村さんの言う「敢えて”見たくないこともみる、考えたくないことも考える”」。ここから始めるしかないのかもしれない。

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