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2014年5月21日 (水)

「いまの日本の政治は期末利益優先の株式会社の論理で国家を運営している。わたくしにはそうとしか見えません」

引き続き、安倍政権について。

きのうのブログ(5月20日)では、1932年に起きた5・15事件を引き合いに、今の日本で起きていることは、安倍総理とその取り巻きによる「静かなクーデター(仮)」ではないか。というような極めて個人的な意見を書いた。

そのあと改めて、精神科医の斎藤環さんの著書『ヤンキー化する日本』を読む。対談相手のひとり、日本近代史が専門の愛知県立大学教授の与那覇潤さんは、次のように語っていて驚いた。

「戦前のヤンキー政治運動といえば、青年将校でしょうが、5・15事件の三上卓が書いた『昭和維新の歌』の『財閥富を誇れども、社稷を思う心なし』っていうのが、だぶん今もヤンキーにはぐっとくる」 (P169)

やっぱり、ヤンキーとクーデターは関係が深かかったのである。

ここで出てくる「社稷」というのは、「国家」とのこと。つまり、5・15事件に参加した三上卓氏は当時、財閥を「富や金には関心あるけど、国家についてはどうでもいいと思っている」と批判しているのである。

ここで一端、話を変える。

東京新聞(5月17日)を読んでいたら、『帝国主義はよみがえるのか?』という特集記事があった。

ウクライナ動乱などを受け、今後の世界の動向について、漫画家の小林よりのりさんは、次のように指摘。

「待っているのは力ずくの帝国主義の世界だ」

キャノングローバル戦略研究所の宮家邦彦さんは、次のように指摘している。

「それなりに安定していた国際秩序は崩れ、『帝国主義的なネオナショナリズム』が噴き出す時代になったのです」

ともに今後、帝国主義的な動きが世界に広がっていくという指摘をしている。

帝国主義。
これも個人的な考えで申し訳ないが、僕はずっと、グローバリズムというのを日本語に直すと「帝国主義」だと理解してきた。ただし、この場合の主体は「国家」ではなく「多国籍企業」。今、問題とすべきは、この多国籍企業による「帝国主義」なのではないかと思っている。

ライターの速水健朗さんは、著書『ラーメンと愛国』で次のように書いている。

「現代の『帝国』とは、軍事力による征服ではなく、多国籍企業の活動や、文化商品の流通など、国境や民族を超えたグローバルな経済の在り方を指す。これらを新しい覇権として捉える見方が、ネグリとハートの『帝国』である」 (P258)

そこで、安倍政権による「静かなクーデター(仮)」の話に戻す。

このクーデターの主犯者は、安倍総理とその取り巻きだけではない。もうひとつ財界も中心的な役割を担っていると思う。

その財界のために日本という国そのものが「株式会社化」されていると、内田樹さんは指摘している。著書『街場の憂国会議』より。

「企業経営者たちが民主制を抑制して、できればトップダウンの統治組織(彼らが帰属している株式会社と同じような組織)に改組したいと願っている理由はよくわかる。その理由はずっと合理的である。民主制を廃絶して、彼らが現に運営している組織に似せることの方が端的に『商売がしやすい』からである」 (P17)

「安倍晋三とその同盟者たちが追及しているのは(当人たちにそこまではっきりとした自覚はないと思うが)、『国民国家の株式会社化』である。国の存在理由を『経済成長』に一元化することである。国のすべてのシステムを『経済成長』に資するか否かを基準にして適否を判断し、『成長モデル』に準拠して制度を作り変えることである」 (P18)

「2014年現在、日本で今起きているのは一つの『政治的出来事』というより、むしろ政治過程そのものの液状化と呼ぶべきだと思う。政治が自重を失い、グローバル企業の経営戦略や株の値動きに連動して漂流し始めたのである」 (P16)

政治の論理によって国家が作られているのではない。財界の論理によって国家がつくりかえられているという指摘である。

長くなったけど、まだ続けます。

法人減税や雇用形態の変更はもちろん、海外への原発売り込みのための原発推進、そして武器三原則の変更など…。今、安倍政権が進めようとしている政策のほとんどは、財界のための政策が中心とも言えるのではないか。

今回の、集団的自衛権の容認についても、「財界のため」という見方をすると理解しやすい。

政治学者の中野晃一さんは、『街場の憂国会議』で次のように書いている。

「そもそも1991年の湾岸危機を契機として財界は、日本が自由に海外に自衛隊を派遣したり、制約なくアメリカ軍と共同作戦をとったりできるようにするための憲法改正の積極的な支持へと回った」 (P198)

「グローバル企業のエリートたちにとっても『ナショナリズム』企業収益を確保、増大させるための便宜的な手段として用いられているのだ」 (P198)

ナショナリズム高揚による実益ということもある。

それとグローバリズムの中、海外の支社や工場で働くものを多く抱える多国籍企業にとって、自分たちで彼らを守るよりも、自衛隊に守ってもらった方が、経営的には都合がよい、という考えもあるのではないか。そのためにも集団的自衛権は必要となる。

戦前の日本が、陸軍や海軍と財閥に導かれたように、今の日本は、財務省と財界が自分たちに都合のよい国家を作っているのでは、と考えたくなる。安倍政権は、それに乗っかっているだけということになる。

確かにうがった見方なのかもしれないが、この方が色んな事がすっきり理解できるということも確か。

作家の半藤一利さんは、著書『腰ぬけ愛国談義』で次のように指摘する。

「いまの日本の政治は期末利益優先の株式会社の論理で国家を運営している。わたくしにはそうとしか見えません。とにかく目先きの利益が大事であって、組織そのものの永続は目的ではない」 (P267)

5・15事件で三上卓氏が『昭和維新の歌』で書いた「財閥富を誇れども、社稷を思う心なし」というセリフは、82年たった現在でも当てはまる。

ただ当時の青年将校たちのクーデターは、そんな財閥を憂いて決起してのものだが、今、安倍政権による「クーデター(仮)」は、財界と結託しているという点ではまったくベクトルが逆なのであるが…。

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