「損得勘定で考える人であふれた社会、ポリスは滅びる」
先週に続いて安倍政権について。
前々回のブログ(5月20日)から、今、安倍総理とその取り巻きによる「静かなクーデター(仮)」が起きているのではないかということを書いた。
その後、いろいろ資料を読んでいたら、安倍政権が「憲法96条改正」をもくろんでいた当時、その動きについて、上智大学の憲法学者である高見勝利さんが次のような表現を使っていた。東京新聞(2013年4月19日)より。
「改正手続き自体を変えるというのは、憲法学的には想定外で、一種のクーデター」
この時の動きが「一種のクーデター」とするなら、解釈改憲はそれ以上。まさに「クーデター」ということになってしまう。
前回のブログ(5月21日)では、その「静かなクーデター(仮)」の首謀者は、実は財界ではないかと書いた。財界が、自分たちに都合のよいように日本の仕組みを変えようとしているという、ちょっと穿っているかもしれない見方を示した。
財界が主導するクーデター。政治の論理より、財界の論理が強まっていくということは、打算的であり、損得勘定が優先される社会がより広まっていくということなのではないか。
損得勘定をしやすくするためには、全てが「数値」に表せた方が便利になる。TPPなどがそうである。(5月12日のブログ)
でも、そんな社会が果たして長続きするのだろうか。
社会学者の宮台真司さんは、TBSラジオ『デイキャッチ』(4月25日放送)で次のように語っていた。
「自発性よりも内発性の方が大切だ。つまり損得勘定よりも、内から湧いてくる力の方が必要だ。なにゆえならば…。今から2500年前のギリシャの人たちが言ったことだけれども、壁を越えられないと国や共同体が滅びるというときに、損得勘定で考える人であふれた社会、ポリスは滅びる。そうじゃなくて、損得勘定を越えた振る舞いをできる人間がどれだけいるのかということがポリスを救うんだという発想がある」
そういうことなのである。
ただし、財界人のひとり、京セラの稲森和夫氏は、次のように言っている。(2012年5月12日のブログ )
「経営は、損得で判断するのではなく、善悪で判断することが大事」
本来は、会社だって「損得勘定で考える人」であふれた場合は滅びるのだと思う。
でも。
よくよく考えてみれば、昨年の参議院選挙で自民党はとにかく「経済」だけをうたって、選挙に勝利しているのである。
その選挙を受けて、内田樹さんは次のように書いていた。朝日新聞(2013年7月23日)より。
「『経済最優先』と参院選では候補者たちは誰もがそう言い立てたが、それは平たく言えば『未来の豊かさより、今の金』ということである。今ここで干上がったら、未来もくそもないというやぶれかぶれの本音である」
「古人はこのような未来を軽んじる時間意識のありようを『朝三暮四』と呼んだ」
まさに「これから財界の考え方で行く」ということを安倍総理は、選挙の時から宣言していたのである。それに国民がお墨付きを与えているのである。
消費税増税、残業ゼロ法案など、ますます財界よりの政策がすすめられていくのだろうが、2500年前のギリシアの人たちが言ったことが当てはまらないように…。
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