「『目の前』とちゃんと向き合って、『目の前』から解決していくことは、生物にとって、生死にかかわる切実な行動原理だということだけを強調しておきます」
きのうのブログ(6月12日)では、「変わる」「変化」にまつわる言葉を並べた。
もうひとつ、こんな言葉も。野球選手の上原浩治さん。著書『覚悟の決め方』から。
「何かを『変える勇気』も必要だが、『変えない勇気』も必要なのだ」 (P32)
この本の中で、上原投手は、野球選手としてルーティンを守っていくことの大切さ、そして難しさを説く。
「毎日同じことを淡々と、黙々とこなす―。はたから見れば、もっとも楽そうに見えるかもしれない。簡単そうに思えるかもしれない。でも、じつはこれがいちばん難しい。つくづくそう思う」 (P33)
このルーティンを守ることについては、イチロー選手も大切にしている。(2012年3月9日のブログ)
ヤンキース・バッティングコーチのケビン・ロングさんは、イチローについて次のように語っている。NHK『プロフェッショナル』(2013年12月16日放送)より。
「まるで宗教の儀式を見ているようだよ。イチローは毎日必ず6時15分にバッティングケージに来る。1分の狂いもなくね。練習が終わるのは6時19分から20分の間だ。きっちり同じ回数だけバットを振るんだ。ここれまでくるとほとんど精密機械のようだよ」
なぜ、イチロー選手はルーティンを厳格に守るのか。改めて、イチローのトレーナーを務める森本貴義さんの指摘を紹介する。著書『一流の思考法』より。
「『昨日の自分』と『今日の自分』を比較しているんです。繰り返すことで熟練し、型をつくることで修正ができます。イチロー選手が継続的に結果を出せる秘訣は『毎日同じことを同じ時間に行う』」
ルーティンを繰り返すことで、自分のひとつ型を身につける。さらにそれを繰り返すことで、修正すべき部分を見出すのである。「変えるべき部分」と「変えてはいけない部分」とを判別するということでもある。
上記の言葉は、たまたま野球選手2人のものだが、これは僕たちの生活にも当てはまることだと思う。ルーティンとは、「日常生活」という言葉に置き換えられる。
繰り返される日常生活の中で、変えなければいけない部分と変えてはいけない部分を見極める。そして変えなければいけない部分、修正すべき部分に手を付け、良い方に転がしていく。きっと世の中、社会を変えていくとは、その延長にあることなんだと思う。
次に載せる2人の方の指摘は、まさにそのことを言っている。
建築家の隈研吾さん。著書『僕の場所』より。
「僕ら生物は具体的でちっぽけな身体を持っています。具体的身体があるということは、何かが『目の前』にあるということです」
「『目の前』を媒介として、世界と対等に向かい合えるわけです。サルトルが少し難しい言葉で、目の前がいかに大事であり、近くのものから解決していかなければいけないと語っています。何しろ世界には問題が多すぎるからです」
「建築とは『目の前』に対して何かを提案することです。『目の前』とちゃんと向き合って、『目の前』から解決していくことは、生物にとって、生死にかかわる切実な行動原理だということだけを強調しておきます」 (P87)
そして、社会学者の古市憲寿さん。著書『だから日本はズレている』より。
「僕たちはまず『今、ここ』にいる自分たち自身も社会の一部だということを思い出すべきだと思う。まず『今、ここ』で暮らす自分や仲間を大切にすること。自分たちが生きやすい環境を作ろうとすること。それは、結局社会を良くすることになるのだ」 (P217)
社会を変える、良くしていくということは、日常生活の中での「今、ここ」、「目の前」を見つめ、少しずつ変えていくということなのである。
もうひとつ最後に。生物学者の福岡伸一さん。著書『動的平衡ダイアローグ』から。
「生物も個人も、先を見通すことはできない。できるのはせいぜい、いまあるものを利用したり、改良したりすること。そうして生き延びてゆくことなんです」 (P159)
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