「偶然の出会いや異質なものとの衝突から、新しいものが生まれていくものだ」
もう少し、今後の日本サッカーの課題について言葉を転がしてみたい。基本的に、きのうのブログ(7月4日)の続き。
元ヴェルディ総監督の李国秀さんは、今後の日本サッカーの課題として、読売新聞(6月27日)で次の言葉を載せている。
「うまく、賢く、速くて強い。そして社会性を備えた日本代表を生み出すための土台作りには、指導者の広い視野と高い志が不可欠だ」
朝日新聞編集委員の潮智史さんは、雑誌『AERA』(7月7日号)で次のように書いている。
「戦術も技術も大切だが、世界の価値観はもっと幅広い。いってみれば、チームの戦い方も選手の資質や能力も、日本のサッカーの間口は狭すぎる」 (P71)
サッカー解説者のセルジオ越後さん。日刊スポーツ(6月26日)より。
「戦術や技術とかだけじゃなく、文化も含めての話なんだ」
この上記3人のコメントから読み取れるのも、今後の日本サッカーに必要となってくるのは、サッカーの戦術や技術だけではないということ。「社会性」であり、「価値観」であり、「文化」が問われている、という指摘。大きく肯首したい。
では、一体、日本チームがサッカーを通して表現したり、世界に訴えたりすべき、社会の価値観とは何なのか。何をしていけばいいのか。
今日の朝日新聞(7月5日)には、W杯を現地視察したというJリーグの村井満チェアマンのインタビューが載っている。ざっと目についたコメントを挙げてみる。
「想定しない事象が起きたときに、柔軟に対応できる力の重要性を感じた」
「日本では多くの場合、過去に成功した知恵を、どう伝えるかということが中心になる。答えを持っている側が上に立ち、下に伝えるというスタイルで、コミュニケーションが一方通行になりがちだ」
「偶然の出会いや異質なものとの衝突から、新しいものが生まれていくものだ」
「先生から教えを請う『教室』や『習い事』の場ではなく、子どもだけでワイワイやれる『遊び場』を、Jリーグが提供していけばいいと思う」
日本サッカー界の今後の課題についての言葉だが、例えば、原発事故から見えてきた課題にもそのまま当てはめることができるのでは、と思える。
きのうのブログ(7月4日)で触れたこととも重なるが、結局は「多様性」をいかに受け入れていくか、なんだと思う。サッカーの世界にも、今まで以上に多様性をどんどん取り入れることで、異質な文化や背景、考えを持つ選手や人びとと出会い、衝突し、折り合い、共存して、そこから新しい価値観や力が生まれてくる。
村井チェアマンの言うように、「偶然の出会いや異質なものとの衝突」を生み、「新しいものが生まれていく」。それを続けていけば、上記の潮智史氏が指摘するように、日本サッカーの「間口」が広くなっていく。
それを「面倒くさいこと」として、自分にとって異質なもの、邪魔なものとして排除していては、その世界は何も変わらないだろうし、何も新しいものは生まれてこない。
何度も書くが、日本サッカーの世界だけではなく、日本社会にもそのまま当てはまる課題である。
サッカー以外の様々な分野で、同じ問題を抱えているのは間違いない。例えば、お笑いの世界。佐藤義和さんが指摘する言葉は、日本サッカーへの指摘と完全に重なる。著書『バラエティ番組がなくなる日』より。(5月13日のブログ)
「今どきのお笑いタレントたちは、とても頭がよく、社会性もある。ネタの完成度も高く、整っている。現在の視聴者にどのようなものが受けるかを研究した上で、正しい計算をしている。どんな舞台に立たせても、一定の笑いをとり、客を満足させることができるのだ」 (P123)
「その一方で、時代を変えていこうとする気概、気負いのようなものはまったくない。ないことが悪いとは思わないが、新しい時代をつくっていくための武器としての破壊力もあまり感じられない」 (P128)
技術はあるが、破壊力がない…。サッカーもお笑いも同じ。
もちろんサッカー界が変われば、そのまま社会が変わるわけではないだろう。しかし日本のサッカー界が、サッカー選手が、われわれサポーターが、社会に率先して「多様性」に取り組むことによって、「社会性」を身につけたサッカーが可能になり、それをピッチでアピールしていくことで、やがて社会をも少しは変えられるのでは、と思うし、そう思いたい。
« 「世の中の大事なことって、たいてい面倒くさいんだよ」 | トップページ | 「政治的な立場を超えて、サッカーで人々が一つになっていると実感できる瞬間があるのは、大きな喜びだ。それがスポーツの力なんだと思う」 »
「★サッカーと多様性」カテゴリの記事
- 「政治においては『言葉がすべて』なのです」(2014.07.23)
- 「多様な『正しいこと』をすり合わせ、みんなで『正しいこと』を模索し続けなければ、破滅の道を歩んでしまうのではないか」 (2014.07.19)
- 「ドイツにとって移民国家への転換は、外国人を『リスクとコストと考える文化』から『ドイツに貢献する歓迎すべき人々と考える文化』への転換でした」(2014.07.17)
- 「多元的な環境がいい男を作るんです」(2014.07.16)
- 「どうも日本人は、そういうミスやリスクのある要素を排除したいと考える傾向があるようだ。サッカーに限らず、人生においても、そういう傾向があるように思える」 (2014.07.14)
コメント
この記事へのコメントは終了しました。
« 「世の中の大事なことって、たいてい面倒くさいんだよ」 | トップページ | 「政治的な立場を超えて、サッカーで人々が一つになっていると実感できる瞬間があるのは、大きな喜びだ。それがスポーツの力なんだと思う」 »
I really like your writing style, great info, thank you for putting up abfddkaebbea
投稿: Johne675 | 2014年7月31日 (木) 12時18分
Very nice site! [url=http://opeyixa2.com/qvovqta/2.html]cheap goods[/url]
投稿: Pharme973 | 2014年8月 3日 (日) 14時56分
Very nice site! cheap goods http://opeyixa2.com/qvovqta/4.html
投稿: Pharmd317 | 2014年8月 3日 (日) 14時58分