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2014年10月 8日 (水)

「あの戦争の随所で日本は『希望的観測』に頼って失敗しました」

「予測社会」その8。もう一度、サッカーに話を持っていってみたい。

サッカーライターの杉山茂樹さんは、近著『崩壊以後』で次のように書く。

「プレビューとレビュー。日本サッカー界(スポーツ界)に多いのはプレビューだ。W杯前は『さあ、始まりますよ』と、楽観的な見通しで前景気を煽ろうとする。コロンビア戦を前にすれば、『2点差以上で勝利を収めれば…』と、少ない可能性を、大きく伝えようとする。ならば試合後は、それと同じくらいのボリュームで、レビューを伝えるのが、あるべき姿というものだ」 (P264)

確かにテレビも新聞も、W杯での事前の盛り上げはかなり多かった。
 

そのプレビューでは、現実的な分析記事や現状についての批評記事などよりも、「どうなるか?」「どこまで勝つか?」といった事前の予測記事が殆どを占める。W杯ブラジル大会の前も「優勝を狙える」だの、「ベスト8とは確実」などの予測であふれていた。それは予測というより、もう希望的観測」と言ってしかるべきもの。

杉山さんは、著書『「負け」に向き合う勇気』では次のように表現する。

「報道と応援を一緒くたにしているのが日本の報道の問題だ」 (P72)

現実的な「分析」から、単なる「予測」、そして「希望的観測」へのすり替え。これは、「あの戦争」の当時に行われていたことでもある。

作家の半藤一利さんの言葉。著書『あの戦争になぜ負けたのか』より。

「あの戦争の随所で日本は『希望的観測』に頼って失敗しました。アメリカの出方を見誤ったのもその一つです」 (P15)

内田樹さんは、予測が希望的観測にすり替わっていくことを次のように語っている。著書『こんな日本でよかったね』より。

「『現在』に腰を据えていると、『できることなら、我が身には可能な限り「わけのわかったこと」だけが選択的に起こってほしいものだ』という無意識の欲望の浸潤を防ぐことができない」

「この無意識の欲望はかならずや『まさか「こんなこと」が起こるとは思わなかった』ことの到来の予兆を過小評価するように私を導く」 (P142)

その「希望的観測」に我々は、自分自身を縛りつける。再び、杉山茂樹さん著書『崩壊以後』より。

「大会終了後、日本に帰国して見たテレビでは、有名な司会者が次のようなことを言っていた。『大会前から、日本が負けるとは言えませんしね。そんなことを言ったら、誰もテレビを見なくなってしまう』。日本の力が不足していても、『行ける!』『やれる!』と煽ることを、やむを得ないことだと言っているように聞こえた」 (P29)

まさに空気が支配し、それに従うだけの社会。誰も「水を差す」ことをしない。(2013年9月13日のブログ

メディアの現場では、個々の意思よりも、予測や希望的観測が優先されるようになる。これは、僕が働いていた放送メディアの現場でも強く感じたことである。

「数字が取れる」「みんな観たいと思っている」という予測というか、「希望的観測」でニュースが組み立てられていく。そこには、「このニュースの意義を伝えたい!」「今、批判しなければ!」というような個々の意思は感じられない。

改めて、今福龍太さんの言葉を。ビデオニュース・ドットコム(7月19日放送)より。(9月18日のブログ

「未来予測って好きじゃない。その段階で自分の意思というものが付随的なものになってしまう。僕らはもっと自分の意思というものを持つべき」

メディアさえも、「予測社会」に侵されている。

杉山茂樹さんも次のように書く。『崩壊以後』より。

「少なくとも僕が確認した記事は、だれだれがこう言っていたというものばかり、観戦取材した記者が、自らの目で語った記事を確認することはなかった」 (P70)

「原稿の中に、自分の意思を可能な限り入れ込まない。もはやこれが常識になりつつある」 (P70)

日本のメディアでは、自分の意思や考えを表に出すことなく、予測によって紙面が埋められていく。

次回、もう少し「予測社会」とメディアについての話を転がしてみたい。

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