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2014年11月13日 (木)

「もともとは人間も、ゴリラと同じように負けるものを作らなかったのでしょう。しかし、現代の人間はいつしかゴリラ的な価値観をなくし、サル的勝ち好みの社会に突き進んでいます」

選挙、になるらしい。なぜ選挙なのか。まったく分からない。やれやれ。

選挙というと思い出す言葉がある。えにし屋代表の清水義晴さんの言葉。清水さんは、かつて友人が新潟市長選に立候補して、それを手伝った経験を持つ。著書『変革は、弱いところ、小さいところ、遠いところから』より。(3月28日のブログ

「正直言って、私だって『選挙は負けたらなんにもならない』とチラッと思わないでもありません。だれにも負けないほど、心底この候補を当選させたいという、熱意と覚悟で選挙に向かっているのですから。でも、勝つことを至上の目的としてしまうような人を自分たちの代表として選びたくないからこそ、私たちは選挙を始めたはずなのです」 (P228)

「それに、選挙を始めると、相手の候補と戦っているような錯覚に陥りますが、じつは私たちが向かうべき相手とは、選挙民(=市民)です。べつに他の候補が『敵』なわけでもなんでもないはずです」 (P228)

「『選挙は闘いではなく、仲間作りの場にしよう。勝敗というのがあるとするなら、候補者の考えに共感する仲間を、どちらかがより多くつくったかを競いあおう』。仲間にもそれを語り、自分もまた行動で示していきたいと思っていました」 (P229)

経済市場や、スポーツ、受験といった世界だけではなく、いまや選挙の世界にも「勝利至上主義」の風潮が根付いているのである。

そこで、ちょうど読んでいたのが、ゴリラを研究する動物学者で京都大学総長の、山極寿一さん新刊『「サル化」する人間社会』。非常に興味深い読書となった。

「ゴリラには、群れの仲間の中で序列を作らないという特徴があります。ケンカをしても、誰かが勝って誰かが負けるという状況にはなりません。じっと見つめ合って和解します。ゴリラの社会には勝ち負けという概念がありません」 (P8)

「面白いことに、多くのサルはゴリラとは正反対で、まさに勝ち負けの世界を作り出します。サル社会は純然たる序列社会で、もっとも力の強いサルを頂点にヒエラルキーを構築しています。弱いものはいつまでも弱く、強いものは常に強い。諍いが起きれば、大勢が強いものに加勢して弱いものをやっつけてしまいます」 (P8)

興味深いことに、勝ち負けをめぐって「ゴリラ社会」と「サル社会」は全く正反対の性格を持っている。

では、人間社会はどういう社会なのか。

「もともとは人間も、ゴリラと同じように負けるものを作らなかったのでしょう。しかし、現代の人間はいつしかゴリラ的な価値観をなくし、サル的勝ち好みの社会に突き進んでいます」 P168)

「もしも本当に人間社会がサル社会のようになってしまったら、どうなるのでしょうか。サル社会は序列で成り立つピラミッド型の社会です。人を負かし自分は勝とうとする社会、とも言い換えられます。そんな社会では、人間の平等意識は崩壊するでしょう」 (P164)

まさに「勝利至上主義」が蔓延する社会である。

「勝者にならなければいけないかのような意識が、世の中には蔓延しています。そのうえ、勝者は敗者を押しのけるだけではなく、支配する。これは平等意識からは程遠いものです」 (P168)

選挙に勝った。市場で勝った。
ということを御旗に、安倍総理、橋下大阪市長など、独裁型の政治家や経済人が大きな顔をして、反対意見を抑え込む。

「平等よりも勝ち負けが優先するサル型の階層社会では、弱いものは身を引いて強いものを優先させるので、喧嘩が起きにくい。これは支配する者にとってみれば非常に効率が良いですし、経済的です」 P168)

そして、社会の効率化もどんどん進む。

「誰も負けない社会は生きやすいけれど、負けないために勝者にならないといけない世の中は生きにくい。現代社会は勝者をたたえる社会になってしまいました」 (P168)

勝利至上主義。
はたして我々の人間社会は、このまま「サル化」していくのか。それとも「ゴリラ化」できるのか。

 


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