「ドイツ人は、自分たちの社会を批判して元気になっている。脳が最高に働き、議論を交わす喜びがあるから。そのうれしさを日本の人々にも味わってほしい」
きのうのブログ(12月11日)の続き。
先週末のラジオ番組の録音を聴いていたら、久米宏さんが自民党が出したテレビ各社に対する「公正中立」の要請文書について次のように話していた。TBSラジオ『久米宏 ラジオなんですけど』(12月6日放送)より。
「与党というのはマスコミから批判を受けて当然の立場だということが分かっていない。与党を批判しないとマスコミは存在価値がない。そもそも。与党はマスコミに批判されて当たり前だという民主主義の根本が分かっていない」
まさに正論。本当にそう思う。
もちろん日本社会で、批判や批評を嫌うのは政治家ばかりのことではない。
政治学者の國分功一郎さんが住民運動を通して、行政や自治体に対して思ったこと。TBSラジオ『セッション22』(2013年4月16日放送)より。
「提案をクレームとして受け取られる。こういうことを言われたことがない」
また國分さんは、シンポジウム『どんぐりと民主主義入門編』(2013年5月11日)でこんなことも言っている。
「政治家や行政などは、提案を受けていっしょに考えていく癖をつけないと。全部クレームに聞こえてしまっている」
他者からの意見にもっと耳を貸すべきということ。もっと言えば、政治家や行政の人には、批評や批判の中から「提言」や「問題提起」を読み解く力を身につけてほしい。
セルジオ越後さんの言葉。著書『サッカー日本代表「史上最強」のウソ』より。
「日本語には『提言』という言葉がありますよね。しかしそれがうまく響かない。提言ができない国というのは、民主主義ではないですよ。提言が批判に聞こえてしまう」 (P25)
こちらもセルジオさん。著書『日本のサッカーが世界一になるための26の提言』より。
「僕は仕事で『提言』していると思っている。批判だけでは意味がないし、褒めるだけでも意味がない。批判することと褒めること。その幅が大切だと思っているんですよ」 (P57)
次は作家の川上未映子さんの言葉。著書『あなたは赤ちゃん』で、子育てを通しての指摘である。
「女性が助けを求めても、人間扱いしてくれと叫んでも、男性や社会にとっては、それはどこまでも『クレーム』でしかないのだな。クレームとして処理されるだけで、問題提起にもなりはしないのだな。この社会を作っている男性たちの頭の中身が変わらない以上、なにも変わることなんてないのかもしれない」 (P235)
やはり政治の世界だけではない。スポーツや日常生活の中でも、外部からもたらされた「提言」や「問題提起」を、すべて「クレーム」として処理してしまう社会になってしまっている。それらを前向きに捉え、進歩のための糧にするという発想がない。悲しいことに。
だから、巨大な権力を持った安倍政権や自民党も、提言、問題提起、批評、批判、クレームを全て一緒くたにしてブロックしようとする。そのための介入についても全くテライがない。
最後に作家の多和田葉子さんの言葉。多和田さんはドイツ在住である。東京新聞(12月2日)より。
「ドイツ人は、自分たちの社会を批判して元気になっている。脳が最高に働き、議論を交わす喜びがあるから。そのうれしさを日本の人々にも味わってほしい」
これは日本社会へのとても良いエール。
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