「批判されることが全くなかったら、進歩などありえるはずがない。自分がいいのかどうかすら、知ることができない」
自民党は、先月20日に、在京のテレビキー局各社に対し、衆院選の報道にあたって「公平中立、公正の確保」を求める文書を送っていたという。信じられない「介入」である。
今日はこの問題について。
自民党の文書について、社会学者の宮台真司さんは次のように語っている。ビデオニュース・ドットコム「ニュース・コメンティタリー」(12月6日配信)より。
「中立性ということを口実にして、様々な政治的な介入が強要される事態になりかねない、じゃなくて既になってしまった」 (6分ごろ)
これによって、選挙報道が減っていることは確かなようである。
最近、ジャーナリストの青木理さんの著書『青木理の抵抗の視線』を読み、こんな指摘があったのも思い出した。
「知ることと考えることを奪おうとするのは、独裁政権の顕著な特徴だよね。『新聞をなくして政府を遺すべきか、政府をなくして新聞を遺すべきか、そのどちらかを選ばなければならないとしたら、私は後者を選ぶ』といったのはトマス・ジェファソンだけど、ここでいう新聞というのは新聞社という意味じゃなく、メディアとか情報とか言論・報道の自由っていうことでしょう」 (P234)
ここでも「独裁政権」という言葉が出てくる。
なぜ、安倍政権は批判されることをそんなにも恐れるのか。作家の平川克美さんの言葉。ラジオデイズ『ふたりでお茶を』(11月号)より。
「政治家なんてボロクソに言われる職業じゃない。そのことに耐えて、そのことを織り込みずみでやるべきことをやる。安倍晋三はやっぱり褒めてもらいたい人だから。褒めてもらいたいけど、そうはいかないわけ。だから褒めてくれる人だけ集めて、他はブロックしてしまう」 (48分ごろ)
上記のトマス・ジェファソン氏の言葉ではないが、批評や批判がなくてちゃんとした社会がつくれるのだろうか。そう思う。
サッカーのオシム氏の言葉を思い出す。雑誌『フットボールサミット』(第6号)より。
「批判されることが全くなかったら、進歩などありえるはずがない。自分がいいのかどうかすら、知ることができない。新聞の批評を読んで、自分が優れているとようやく分かる」
「私に言わせれば、それが進歩のための唯一の道だが、日本では批判することもされることも嫌う。誰も批判されることを喜ばないのはどこでも同じだ。誰もが愛されながら生きたいと願っている。だがそれでも、進歩のために批判を受け入れている」
ゴンこと、中山雅史さんも、著書『魂の在処』で次のように語っている。
「批判がなければ成長はない。ワールドカップのときだけではなく、ふだんから、もっとサッカーについて語り合ってもらえるようになりたい。ひとりでも多くの人に監督、コーチ、評論家になってほしい。たくさんのひとにきびしくみつめてもらうことが、日本のサッカーがよりプロフェッショナルなものになるためにもっとも重要なのだと思う」 (P127)
このサッカーについての言葉は、そのまま政治についてもあてはまる。安倍総理に聴かせたい。
もうひとつ。
エジプト出身のタレント、フィフィさんの言葉。著書『おかしいことを「おかしい」と言えない日本という社会へ』より。
「実は社会に対して問題提起することすら、はばかれる社会だなんて、言論を抑えられる国よりタチが悪いじゃないですか」 (P15)
とても重い指摘だと思う。
ただ、日本社会でも「言論を抑えられる」風潮が強まっていることも確かだと思う。
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