「そんな中で、どうやって正気を保つのか。しょっちゅうアイロニックな発言をしてみる、ブラックジョークを放ってみる、実はそういうところから正気に返ることができるのではないか」
前々回のブログ(7月27日)から、「粉飾社会」「水増し社会」というものについて自分なりに書いている。
政治学者の白井聡さんは、いとうせいこうさんとの対談で次のように語っている。NHKラジオ『いとうせいこうトーキングセッション』(8月14日放送) より。
「2011年の『3・11』の発生。特に福島原発事故。あの事故が発生する中で、これはどこかで見たことがあると思った。戦争の時の日本と同じ。あの戦争の後悔と反省の上に立って戦後の日本はあるという戦後の語り。しかし『ここまで嘘だったとは』というのに気づかされた」
戦後日本そのものが、嘘にまみれている…。
もしかすると白井さんが指摘してきた「永続敗戦」こそが、国家による「粉飾」「水増し」の行いなのかもしれない。そういう気もしてくる。
次の白井さんの指摘は、社会主義社会での国民についてのもの。同じくNHKラジオ『いとうせいこうトーキングセッション』(8月14日放送)より。
「人の精神は弱いので、最初は『これ、おかしいじゃないか』と思っていても、利害関係が出て来て、それでメシを食べているということがあると、最初はマズイと思っていても、だんだんやっているうちに『いいところもあるし、必要なものだし』という形で自分をだましていく。これが“虚偽意識”と呼ばれるもの。これこそが、僕は一番の敵だと思っている」
この指摘は、そのまま、東芝を始め、同調圧力の強まっている日本社会そのものにも当てはまる。
つまり“虚偽意識”で満たされている社会…。
こちらも白井聡さんの指摘。著書『偽りの戦後日本』より。
「僕の実感からすれば、日本人から自由を奪っている最大の要素は、同調圧力の強さだと思うのです。ただし、同調圧力はどの社会にもあるので、それに抵抗する弱さと言った方が正確かもしれません」 (P50)
こうした背景もあって、「永続敗戦」、そして「粉飾社会」「水増し社会」は日本という国でどんどん広がり、さらに続いていく。
だからこそ、原発をめぐる「安全神話」という“虚偽意識”も存在し続けているのではないか。
ジャーナリストの船橋洋一さんの次の言葉と重なる 。ビデオニュース・ドットコム『マル激トーク・オン・ディマンド』(3月8日放送)より。
「異論をあえて唱えることをダサい。KYなんだよ、読めないと。空気を読めるやつばかりだから、役に立たない。村と空気のガバナンスをやっているから、どうしても危機には弱い」 (パート①29分ごろ)
では、どうしたらいいのか。処方箋のヒントについても、白井聡さんは語っている。NHKラジオ『いとうせいこうトーキングセッション』(8月14日放送)より。
「戦後の社会主義体制のポーランドのある思想家が『虚偽意識を避けるためにはシニカルであることか、アイロニカルであることがとても大事だった』と言っている。全体主義的な体制、公式な価値観と言うものがばっちり決まっていて、それに外れるようなことは物理的な暴力を与えられる危険性を伴うようなところでは、『それはおかしい』とは率直に言えない。そうなると、その中で生き延びながら批判的意識を持つということはとても難しいこと」
「そんな中で、どうやって正気を保つのか。しょっちゅうアイロニックな発言をしてみる、ブラックジョークを放ってみる、実はそういうところから正気に返ることができるのではないか」
これは、サッカー界の差別的言動が問題になった時に文化人類学者の今福龍太さんが語っていた次の言葉とも重なる。毎日新聞(10月31日)より。(2014年12月17日のブログ)
「差別的現実に硬化し、権力による監視や懲罰という対抗にうって出ることは、かえって社会の柔軟な自浄作用を阻害する。むしろ、パロディや関節はずしのようなエレガントな対処法によって、この問題への一人一人の理解の裾野を広げてゆくことも重要だ」
もうひとつ、白井聡さんの言葉。NHKラジオ『いとうせいこうトーキングセッション』(8月14日放送)より。
「どう生きるべきかという話はそんなに難しいことではない。これは不愉快だな、これはおかしいな、これには乗れないな、と言うものに対しては、『嫌だ』と言い続けるしかない」
<白井聡さん関連>
「永続敗戦」(2014年7月15日のブログ)
「永続敗戦」と「予測社会」(2014年10月9日のブログ)
<水を差す>
2013年9月13日のブログ
2013年9月17日のブログ
2013年年10月9日のブログ
<違和感>
2014年6月28日のブログ
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