« 2015年10月 | トップページ | 2016年1月 »

2015年11月の記事

2015年11月 3日 (火)

「正解病ってのが、いまの時代病のような気がする」

きのうのブログ(11月2日では、ラグビーのエディー・ジョーンズ監督の日本のラグビー界に対するの以下の指摘を紹介した。NHK『プロフェッショナル』(1月26日放送)より。

「日本の練習で一番間違っているのが、ミスをしないように練習することです。『ノーミス!ノーミス!』と叫んでいますが、ミスするから上達するのです」

この指摘は、スポーツだけに当てはまることではない。きっと。

社会全体でも、コンプライアンスが重宝され、もしミスをしようものなら、徹底的に叩かれる。誰も彼もが「リスクゼロ」を求められ、ヘロヘロになっていている。

そんな風潮に対する指摘を…。

作家の糸井重里さんのズバリ一言。著書『ぼくの好きなコロッケ。』より。

「正解病ってのが、いまの時代病のような気がする」 (P158)

藤原和博さんの言葉。著書『負ける力』より。

「成熟社会に入った日本では、もはや唯一の『正解』があることなんて皆無なのに、まだ成長社会の頃のように正解がある前提で取り組むから、それ以上進めなくなってしまうわけです」 (P62)

同じく藤原和博さん朝日新聞広告面(3月9日)より。

「戦後の復興期から高度経済成長期にかけて、日本の教育現場には三つのキーワードがありました。『ちゃんとしなさい』『早くしなさい』『いい子にしなさい』これは言い換えれば、『正しく』『早く』『従順に』」

そして、内田樹さん著書『こんな日本でよかったね』より。

「私たちが『誤り』から学ぶものはたいていの場合『正解』から学ぶものよりも大きい」 (P210)

作家の高橋源一郎さんは次のように書いている。雑誌『SIGHT』(61号)より。

「近代になってからずっと、この国では『必ず正解がある』という信仰が、意識の奥底に定着している」

「やっぱりどこかに正解があるんじゃないかってずっと思わされてきた呪縛みたいなものがあるから、そこで急に『正解なんかないよ。だからより悪くならないほうを選べばいいんだよ』って言われても、身体が動かないんだよね」


「だから、威勢のいいことを言っている人につい頼りたくなるのは、正しさへの淡い信憑がまだ残っているんだよ。みんなの中に」 (P122)

なるほど…。

この「必ず正解がある」という信仰と、政府が進める「一億総○○社会」というのは、どこかつながっているような気がする。

「正解」に向かって、社会をひとまとめにして突っ走ろうとする動き。

でもそれは、全体主義につながっていく。かえって閉塞感は強まり、自由は失われていくのではないか。

次の高橋源一郎さんの言葉も思い出す。読売新聞(2012年3月6日)より。

「『本当の正しさ』を突き詰めていくと、人は狭量になり、寛容さを失っていきます」



<参考> 

2013年5月15日のブログ

 



2015年11月 2日 (月)

「ラグビーというものは時にあつれきが想像力を生みます」

ラグビーのW杯ロンドン大会が閉幕した。今回の大会は、かなり楽しませてもらった。

退任する日本代表監督のエディー・ジョーンズ氏が、日本記者クラブで記者会見(10月30日)を行った。個人的には、次の言葉が印象的だった。

「日本には、出る杭は打たれる、という言葉がある。日本のスポーツをとても表していると思う。みんな、他と一緒でいたい」

「ラグビーというものは時にあつれきが想像力を生みます」


あつれきが想像力を生む…。

これは、このブログでは、何度も紹介してきた宮崎駿さんの次の言葉と重なる。NHK『プロフェッショナル』(2013年11月13日)より。

「面倒くさいっていう自分の気持ちとの戦いなんだよ。何が面倒くさいって究極に面倒くさいよね」

「世の中の大事なことって、たいてい面倒くさいんだよ」


さらに、エディ―・ジョーンズ氏による他の言葉も載せておきたい。NHK『プロフェッショナル』(1月26日放送)より。

「日本の練習で一番間違っているのが、ミスをしないように練習することです。『ノーミス!ノーミス!』と叫んでいますが、ミスするから上達するのです」

こちらは、日本経済新聞(2014年3月15日)より。

「日本ではなぜそこまでというくらい、ネガティブな言い方が多いんですね。特にラグビーでは。いつも『ミスを犯さない』という言い方。これをうまくやれたらこうだねという前向きな話より、ネガティブな言い方の方が多い」

これは、ラグビーだけの話ではない。僕が経験した少年野球の指導現場も、まさにネガティブ・ワードが飛び交っていた。(2012年8月28日のブログなど)

サッカーの国際審判の西村雄一さんの言葉も重なる。雑誌『NUMBER』(2014年8月29日号)より。

「挑戦した上でミスするのは仕方がない。重要なのは『自分を信じて、果敢にゴールを狙うことだ』と言ってあげられる雰囲気が生まれてくれば、もっと実力を発揮できるようになるではないかと思います」 P61)

出る杭は徹底的に打たれ、犯したミスは徹底的に叩かれる…。

これはもちろんスポーツだけの話ではない。日本社会にこそ当てはまる指摘なんだと思う。

しかし、出る
杭によってもたらされる軋轢や、様々なミスから学んでいくことで、選手やチームは上達し、より強くなる。それをエディージャパンは証明してくれたのである。




« 2015年10月 | トップページ | 2016年1月 »

カテゴリー

無料ブログはココログ