「キーワードは『エモーショナル』。親しみやすさを強調し、大衆をコントロールしようとしている」
きのう夜6時、安倍総理は集団的自衛権についての記者会見を行った。
その会見について、評論家の小沢遼子さんは、今朝のTBSラジオ『スタンバイ』(5月16日放送)で次のように語っている。
「情緒的だと思った。自分が議員の時、演説は情緒的にやると受けるということが分かって、演説というものが大嫌いになった」
安全保障が専門という東京財団研究員の小原凡司さんは次のように述べていた。TBSラジオ『シャッフル』(5月15日放送)より。
「今日の会見には違和感。重要な議論が抜けて、焦点が矮小化してみえた」
「非常に感情に訴える部分が多かった」
ジャーナリストの神保哲生さんは、同じ番組で次のように指摘している。
「記者会見をテレビのコマーシャルのような扱いをしている気がする」
「時間帯も6時という時間を選んでるし、いわゆるお茶の間の普段政治にあまり関心のない、新聞の政治欄なんてほとんど読んでいない方々に、“やっぱこれは必要なんですよ。そう思うでしょ”というような感じのプレゼンテーション」
まさに、以前このブログ(4月18日)に載せた青山学院大学教授の大石泰彦さんによる安倍政権のメディア対策の指摘そのものの。そんな記者会見だった。もう一度、大石さんの指摘を載せておきたい。毎日新聞夕刊(4月10日)より。
「キーワードは『エモーショナル』。親しみやすさを強調し、大衆をコントロールしようとしている」
さらに元外交官で作家の佐藤優さんは、今朝の文化放送『くにまるジャパン』(5月16日放送)で次のように語っていた。
「きのうの記者会見は演説や会見というより、詩の朗読会、ポエムと思って聞けば理解できる。立派なことをやりたいんだと強い意欲を示したもの。小保方晴子さんの記者会見と一緒。両方ともポエムです」
「ポエムは理屈の話ではない。気合いと、心にどうしたら響くかということ。ある人の心には今回響いたんでしょう。ある人の心には響かない。詩はいいか悪いかという心の受け止め方ですから。きのうは心の時間だったなという感じ」
もう政治もポエムの世界なのである。リーダーの総理大臣が国民に対して堂々とポエムを語っているのだ。
ちなみに、佐藤さんは、安倍政権の外交についても、次のような言葉で語っていた。
「ポエム外交。心の動きだけで外交をやっている」
結局、今の日本の政治や政治家のレベルは、そんなものということなのだろう。
精神科医の斎藤環さんが、朝日新聞(2012年12月27日)で行った次の指摘を裏付けることでもある。
「自民党は右傾化しているというより、ヤンキー化しているのではないでしょうか。自民党はもはや保守政党ではなくヤンキー政党だと考えた方が、いろいろなことがクリアに見えてきます」
ヤンキー化している自民党の総裁だから、会見でポエムなのである。
斎藤環さんは、著書『ヤンキー化する日本』でこんな指摘をする。
「そう、ヤンキーはポエムが好きだ。ポエムは情感を盛り上げ、気合をもたらし、自らの正当性を信じ込ませてくれるなにものかだ。ポエムの良いところは、知識や論理とは無関係に、依拠すべき肯定的感情をもたらしてくれるところだ。同時にまた、ポエムは強力な共感装置でもある」 (P38)
斎藤さんは、ヤンキーの特徴として、次のことも挙げている。
「特徴の例として、熟慮を嫌う、理屈を嫌う、反知性主義の傾向が強い」 (P89)
まさに日本の政治は、熟慮なき、知性なき、論理なき世界に入ろうとしている。それは間違いないと思う。