「つらい過去も全て学び未来に向けて互いを尊敬し合う関係を深めていくことが重要だ」
前回のブログ(1月25日)では、「未来志向」という耳触りのいいフレーズと共に社会全体が前のめりになっていることへの違和感について書いた。
それについての追加の言葉を並べておきたい。
toto(スポーツ振興くじ)がスポーツ応援CM「Stand
by Me篇」というのを流している。
とてもいい感じのCMだと思って見た。でも、最後に出るフレーズがひっかかった。
「前を向け。未来たち」
完全に前傾姿勢なキャッチコピー…。きっと2020年の東京五輪までは、こんな前のめりなスローガンがあふれるに違いない。
前回のブログで、昔は日本では、可視できる過去を「サキ」といい、予測できない未来を「アト」と呼んでいることを紹介した。
そのことと、次のフレーズが重なって興味深い。
作家の赤川次郎さんが東京新聞(1月24日)で自著『セーラー服と機関銃』でのフレーズを取り上げていた。主人公の組長・森泉をサポートする副組長・佐久間がラスト近くでつぶやくフレーズである。
「ヤクザの世界は後ろを向いているんです。義理とか人情とかいいますが、本音は前に進むのが怖いだけです」
さらに、こう続ける。
「だから、前をけっして見ないんです――みんな、臆病なんですよ」 (文庫版P334)
ヤクザに学べ、と言うとヘンかもしれないが、室町時代同様、私たちも、もっと「未来」に対して臆病になるべきなのかもしれない。
また話は飛ぶが、天皇・皇后両陛下がフィリピンを訪問した。その両陛下の慰霊について、フィリピン大教授のリカルド・ホセさんは次のように語っている。毎日新聞(1月28日)より。
「実際に起こったことは消し去ることはできない。忘れてしまってもいけない」
「同じ失敗を繰り返さないための努力はしなければならない」
…と述べたうえで、ホセさんは次のように語っている。
「若い人の多くは歴史に関心がない。今回の両陛下の訪問を一つのきっかけとし、つらい過去も全て学び未来に向けて互いを尊敬し合う関係を深めていくことが重要だ」
過去は学ぶもの。その姿勢を基に、お互い尊敬し合い、信頼し合って未来は築いていくもの。そんな感じだろうか。
アチコチ跳びながら、言葉を並べて考えてみた…。
きっと「未来」というものに対しては、思いっきり前傾姿勢になって進んでいくのではなく、もう少し臆病になって、周りとの信頼関係を担保に進んでいく。そんな姿勢こそ必要なのではないだろうか。そう思った。