「家庭内の会話、小さな集会、署名活動……。なんでもいい。国や世界にプレッシャーをかけ続けることが大切です」
今日から選挙戦が始まった。どうなることやら…。
作家の佐藤優さん。朝日新聞(11月30日)の『私が問う』での指摘が興味深かった。
「菅官房長官は記者会見で『政権が争点を決める』と言いましたが、独裁の発想です。争点は国民が決めるもの」
「一番都合のいい時に選挙をする。白紙委任状をもらえるのが選挙だと考えているのではないでしょうか」
「安倍政権の特徴は『反知性主義』でしょう。客観性、実証性を重視せず、都合よく理解しようとする」
「都合の悪いことは雑談ととらえている」
「問題なのは、経済が悪化した時です。自民に代わる勢力が見えないなか、社会に無気力が広がる。『自分ではなく誰かのせいだ』となり、排外主義に結びつくことになるでしょう」
独裁体制への志向。そして反知性主義。そして、排外主義に向かう流れ。
これらについては、最近のこのブログでも触れてきた。
「独裁」(11月19日のブログ)
「反知性主義」(9月4日のブログなど)
「排外主義」(9月23日のブログなど)
今回は佐藤優さんが上記の記事でも触れている「独裁」についての言葉を改めて追加しておきたい。
独裁は、どう始まるのか。
内田樹さんは、近著『街場の戦争論』で次のように書いている。
「あらためて確認しておきますが、独裁というのは行政府への立法権の委譲のことです。別に『私は今日から独裁者になった。逆らう奴はぶち殺す』とかそういうシアリカルな宣言とともに始まるものではありません。もっと日常的で、非情緒的なものです」 (P128)
「歴史が教えるのは、ほとんどすべての独裁政治は『緊急避難的措置としての行政府への極限集中』から始まっているということです」 (P127)
また内田樹さんは、東京新聞(11月16日)でも次のように指摘している。
「自民党の改憲案では、非常時に国会での審議をへずに法律と同等の政令をつくれる。行政府にすべての権限を集中して事実上の独裁政権をつくることを意味します」
内田樹さんは、上記の著書で「ナチスの独裁」も立法権の委譲から始まったと指摘している。
少し前に、麻生副総理は「ナチスの手口に学んだら」という言葉を口にしている。
それから安倍政権がやったことはなにか…。「解釈改憲」など国会審議を経ない閣議決定の乱用、そして自民党改憲案や議員立法の極端な減少、NHKなどのメディア、日銀人事などへの介入。などなど。まさにすべての権力を行政府のもとに集約しようとするものばかり。
本当に日本でも「誰も気づかないうち」に「独裁体制」が整いつつあるのかもしれない。
そこで、ヒトラーがゲッペルスに言ったという言葉を載せておきたい。『たったひとつの「真実」なんてない』(著・森達也)より。
「青少年に、判断力や批判力を与える必要はない。彼らには、自動車、オートバイ、美しいスター、刺激的な音楽、流行の服、そして仲間に対する競争意識だけを与えてやればよい。青少年から思考力を奪い、指導者の命令に対する服従心のみを植え付けるべきだ。国家や社会、指導者を批判するものに対して、動物的な憎悪を抱かせるようにせよ。少数派や異端者は悪だと思い込ませよ。みんな同じことを考えるようにせよ。みんなと同じように考えないものは、国家の敵だと思い込ませるのだ」 (P81)
まさに、この言葉こそ、「反知性主義」と「排外主義」を広め、「独裁」を作ろうというもの。
さてさて。今月14日が選挙の投票日。どうなることやら、である。
なんだか悲しい言葉ばかり続いてしまったので、最後にもうひとつ。
児童文学作家の那須正幹さんの言葉。「核兵器」について語ったものだけど、政治全般にも当てはまると思う。朝日新聞夕刊(11月28日)より。
「家庭内の会話、小さな集会、署名活動……。なんでもいい。国や世界にプレッシャーをかけ続けることが大切です」